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着メを伝えるランプが光って、メールを見た瞬間笑ってしまった。
「どうどう?2人共ちゃんと届いた?」
「届いたよ!届いたけどこの画像は…!」
To:不破雷蔵
To:久々知兵助
To:竹谷八左ヱ門
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Subject(no title)
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ちゃんと朝食
食べました
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「俺消したのにっ」
「しかもこれハチにも送ってるよね」
「勘ちゃん!!?」
「頼まれてたんだよ、朝ご飯を食べさせてやってほしいって」
そう笑いながら勘ちゃんは携帯を開けて、ハチから届いたらしいメールを兵助に見せた。兵助の手に携帯が渡るとすぐメールの着信を知らせるウーバーの曲。
「勘ちゃんメール来た」
「兵助読んでいいよ」
リュックからレジュメを出している勘ちゃんと、受信BOXを凝視してみるみる顔が赤くなる兵助。
普段から表情の乏しい彼は、本当に嬉しいことがあると笑うではなく顔を赤くさせる。どうやらメールを送ってきたのはハチらしい。
From:はっちゃん
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Subject(no title)
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ありがとう、助かった
ポッキーを束ねて食べるとか兵助もなかなか男前だよな(笑)
でも朝はもっと栄養のつくもので!兵助ただでさえ食細いし偏食だし、てかお前もだ勘右衛門!笑
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「…勘ちゃん」
「なぁに兵助」
「俺、ごめん、…ちょっと」
「うん、大丈夫だよ。行っておいで」
兵助は自分の携帯を握りしめ、足早に図書室を出て行った。ヒラヒラと手を振る勘ちゃんは、僕に向き直ると肩をすくめて苦笑した。法学部在籍の兵助に、来週提出する法のレポートを見てもらう約束をしていたらしい。僕も苦笑いするしかない。
「ほんっと、あのメールの何が兵助を突き動かすのか分からないけど、とにかくはっちゃんに会いたくなっちゃったんだね」
「ふふ、そうだねぇ兵助はハチと中学の頃からずっと一緒だったからね」
「うん、ずっと…ね」
唐突に膝をはたき立ち上がった勘ちゃんを目で追う。
「ずっと、ずっと一緒だったんだもん。一緒にいなきゃだめだよ」
柔らかく笑う勘ちゃんの眼差しは、どこか陰ってて泣きそうで寂しそうで、今にも崩れてしまいそうなのに、真っ直ぐとただ僕を見ていた。
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