ミッション その29


 氷河が突然立ち上がった。
「どうしたんだ」
 星矢が問いかける。
「瞬が近くにいる感じるんだ。」
「よし行こう」
 紫龍はそう言うと星矢と共に立ち上がった。
 瞬は今、沙織と向かい合って立っていた。
「僕はあなたを憎んでいるわけではありません。あなたも好きでアテナとして生まれたわけではないだろうし、あなたなりに使命を果たそうとしているのは立派だと思います。でもあなたの人を人とも思わないような態度はー」
 瞬はそこで一呼吸おき、再び口を開いた。
「兄があなたやグラード財団に対して憎悪を捨てられない気持ちも僕にはよく分かるんです。あなたがたは今までがあまりにも高圧的で非人間的過ぎました。兄の憎悪は、ある意味では逆恨みかもしれませんが、あなたがたの態度にも原因があったと僕は思います。もし、あなたがたが今までに少しでもー」
「お黙り!」
 沙織が叫んだ。怒りのあまり次の言葉が出てこず、かすかに身を振るわせている。
 邪武は心配そうに二人の顔を交互に見比べた。 瞬は言葉使いこそ丁寧であったが沙織に対して人の上に立つ資格はないと言っているのも同じであった。
 瞬は黙って沙織を見つめ返した瞬の瞳に憎悪はない。沙織は再び彼の瞳に同情の色が宿るのを見た。
「あなたは可哀想な人だ…」
 その言葉を聞いた時、沙織は右側を振り上げていた。





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