ミッション その19
一輝と瞬は昨夜入ったファミリーレストランに来ていた。簡単な食事を頼む。
「兄さん、僕どんな仕事でもするだから一緒に堅実な暮らしをしようよ」
「俺達は学校もでていない。親もいない。誰が雇ってくれるっていうんだ。そのことはおまえも十分身にしみているだろう」
そう言われると瞬も沈黙するほかはなかった。
一方、一輝は自分達に送られる危険なコスモを常に感じていた 瞬が立ち上がった。
「どうした瞬?」
「ちょっとトイレにー」
それを聞くと一輝はあわてて立ち上がった。
「俺も一緒に行く」
トイレに入って瞬は困惑した。一輝は用をたすでもなく、じっと彼の方を見ているのである。
「兄さん、そんなに見つめられたら出るものも出ないよ」
「かまうな」
一輝は瞬から目を離すことを怖れていた。
瞬はこの時になって兄が自分の心配をしてついて来てくれたことに気づいた。
‘まるで昔にかえったみたいだ…’
それは、かすかな自己嫌悪とそれを上回る安心感と、さらには自分でも説明できないある種の感情が入れ混じった不思議な感覚だった。
「終わったらテーブルに帰るぞ」
「うん」
一輝の言葉に瞬は幼い頃の素直さそのままに従った。
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