息苦しさに目が醒めた。目の前には見知った色の髪。
身を捩るけど動かない…つまり息苦しさはその人物のせい。溜め息が零れる。

「環…起きてるならちょっと、放して」

けれど、さらにぎゅうっと抱き締められて…苦しい。

「ちょっ、めぐ…、苦しい…っ」

「あ…、悪い…」

少しだけ緩むけれど、未だに抱き締められたまま。何があった?

「環…何かあった?」

聞いても答えない。昨日は普通に寝たし機嫌よかったし…俺、寝てる間に何かしたかな…。

「めぐ…」

「俺より先に死ぬなよ…?」

「え…なんの話?」

また、黙り。

「環?」

環の頬に手を添えれば擦り寄り、渋々こちらを見る。表情は拗ねていた。

「俺、何かした?」

「違う」

「じゃあ…」

「ファウ、キス」

甘えてくる環に苦笑が零れるも甘えられて嬉しくてキスする。

「満足?」

「まだ、もっと」

「んっ…」

迫ってくる環に唇を塞がれ舐められる。
大人しく開いて舌を差し出せば嬉々と絡ませてくる。

「ん…っ、ふ…ぁ」

ゾクゾクと何かが背筋を疾走する。

「ん…んっ、はぁ…っ、めぐ…ぁ」

必死に縋ってくる環には悪いけど、息が続かない。
段々、朧気になる意識で、合図をすれば渋々と離してくれる。

「はぁ…、はぁ…っ」

口端に零れる唾液を舐め口づけてくる感覚にも震えた。
ぎゅっと…けれど、さっきよりも優しい強さで抱き締められる。機嫌は落ち着いていた。

「…どうしたんだ?」

優しく頭を撫でると、環の身体から力が抜けていく。
「…夢で、」

消え入りそうな声音でポツポツと、呟く。

「夢…それで?」

「俺とアンタは敵対してて…最後にアンタが自分に銃を向けて…死ぬんだ…」

瞬間、目眩がした。少し、自分ならありえそうだと。

「夢のアンタは冷たくて、話しかけても無反応で…目が覚めて隣にちゃんといて、少し安心した」

無意識に擦り寄ってくる環。

「うん」

俺も環と同じかもしれない。

「けど、ちゃんと暖かいか…生きてるか確認したかったから…」
服が濡れる。けど、それは些細な事だった。

「うん…もういい。俺はちゃんと生きてるだろ?」

背中に回した手で宥めれば、返事の代わりにぎゅっと抱き締められる。

「…あと、少しだけだからな」

いつも生意気な年下の弱さに俺も抱き締め返して甘えた。


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