十一匹目

ウヴォーとノブナガは
1週間前に戻ってきていた。
現状を知ると、俺らは販売ルートを担当する、と言い残してさっさと本拠地を去ってしまった。



女がフェイタンに付き纏うようになってから、既に2週間。
私達は常に3mほど距離を置いて
交代で監視するようになった。


2人はどこに行くのも一緒のようで
主に地下牢に籠もって勉強し
食事は厨房で並んで食べた。



他の団員は調べ物で忙しいらしく
あまり本拠地に寄り付かなくなっていたが
シャルナークとパクが随日で女と話に来ていた。



何か不審な点はあった?


シャルは炭酸水のビンを片手で弄びながら
私達に聞いた。


別に何も。

フィンクスは退屈そうに煙草の煙を吐き出す。


シャルは?


私は遠巻きに食事をする2人を見ながら
シャルの炭酸水を一口飲んだ。
フェイタンは最近、柄に合わずよく笑う。


どこも似たような情報ばっかりだ。
実際に並行世界に行ったってヤツに何人か会ったけど、全部嘘だったよ。
パクが身体に聞いたから間違いない。


ふうん。


女がのけぞって笑い、フェイタンはそれを支えるように腰に手をまわす。


ねえ、あの2人わりと気があうんじゃない?


シャルは私に目配せするが
私は顔をしかめるだけに留めた。


あの2人がいい感じになったら
フェイは旅団を抜けると思う?
賭けようか?


シャルは楽しそうに笑った。


俺、それ乗ってもいいわ。


マジか、と思いフィンクスを見ると
真面目な顔をしてポケットから携帯を取り出す。


あー残高少ねえな。
取り敢えず1億ジェニーでいいか?


画面を見ながらフィンクスはまた煙を吐き出した。


え、なんで?フィンクス
確証でもあるの?


シャルは身を乗り出す。


俺、昨日の夜聞いちまったんだよ。
地下牢のドアの前で。


シャルはこんなに面白いことは滅多にない、といわんばかりに目を輝かせた。


うん、それでそれで?



やってたな。ありゃ。




マジか。

私は思わず炭酸水を吹き出しそうになった。
まさかとは思っていたが
そこまで距離を詰めているとは知らなかった。


うわー、それすごいな。
でも、フェイタンって普通じゃないでしょ?


私に答えが求められていることに気付いて
急いで飲みくだす。


あー、まあ。
アイツ、相手を傷つけながらじゃないとイかないと思うよ。
たぶん、私じゃない女とヤるときは
相手はもたなくて死んでるんじゃない?


フィンクスはまた2人の方を見て
でもなあ、と呟いた。


なんか、すげえ楽しそうだったけどな。




シャルは口座番号を携帯に打ち込むと、フィンクスに返した。


俺はフェイタンは蜘蛛を抜けない、に賭けるよ。
お前は?


私も、抜けないに賭けるな。

だって、自分が同じ立場だったら
女ごときで抜ける?



男っつーのは女に弱ぇーのよ。



フィンクスは口座番号を、と言って
私に携帯を手渡した。





その夜は、コルトピと私で見張りになった。


コルトピは昨日は最悪だった、と鮮明に話してくれた。


多分聞いたら吐き気がするよ。


コルトピは体育座りで私を見た。
今日は寒さ対策なのか、白いコートを着ている。
たしかに地下牢の廊下は
もうすぐ夏だというのにとても冷えた。


確かに、自分じゃない誰かがヤッてるっていうのは
気持ちのいいモンじゃないよね。



煙草の煙をコルトピの方に向けないように
上を向いて煙を吐き出す。


でも、あと2週間でしょ。

それまでにはケリがつくよ。



読んでいた本にも飽きてきた頃
女のよがるような叫び声が聞こえてきた。



私は顔を上げてコルトピを見ると
コルトピはオエ、と舌を出して顔を顰める。


私達が外にいることを分かってて
わざと大声で喘いでいるに違いない、と思い
胃からムカムカしたものが込み上げてくる。


フェイの声は聞こえないが、女はずっと甲高い声で喘ぎ続けていて
私はその間に3本も煙草を吸っていた。

冷たい扉の向こう側から

愛してる

そう聞こえた気がした。





コルトピは水を飲みに行く、と言い残して厨房に行ってしまい
私は1人でただぼんやり壁を見つめていた。


静かになったな、と思った矢先
扉が開いてフェイが出てきた。


オマエ、1人か?

フェイはタイパンツだけ身にまとい
上半身は何も着ていない。
いつもの出で立ちだった。


そうだけど。


フィンクスはどこに行たね。

フェイタンは煙草の煙を手で払い
苛々した口調で聞く。


フィンクスは仮眠中。
コルトピは水を飲みに行った。


私が再び本に目線を落とすと、
フェイタンは本を蹴り上げた。
衝撃で表紙が破ける。


何すんの?


オマエ、フィンクスから離れるなと言うのがわからないか?

フェイは眉間に皺を寄せて私を睨みつける。


そんなこと言われた覚えはないし
あんたに心配される筋合いはない。


私も胸の前で構えると
フェイタンは一歩、私に向かって踏み込んだ。


オマエ、蜘蛛だということを忘れてないか?
オマエの能力が何のためのものか忘れたのか?


確かに、私は蛇を飼っている間は
弱ってるし戦うことはできないけど
あんな小娘1人に手間取るような鍛え方はしてない。


今からだって殺せるよ。
試そうか?


せせら笑ってみせると、
フェイは素早く私の胸ぐらを掴んだ。


あの女のことじゃないね。
もし、ここに敵が入り込めば
オマエが足枷になる言てるよ。


離せ。


私はフェイタンの腕を掴み返したが
フェイは全く動じなかった。


発動させている間は、フィンクスの傍を離れるな。


掴んでいた手を離し、私はドサリと床に倒れ込んだ。


フェイの背後で、あの女が勝ち誇ったように微笑んだのを、私は見逃さなかった。





それから1週間は変わらない調子で過ぎていき
シャル達もなんの手がかりもつかめないようだった。

女は相変わらずフェイタンにベタベタだったが
少しずつ他の団員にも接触するようになっていた。



それどうしたの?


フィンクスが持っていたクッキーの袋を指すと

レイラからもらった、とのたまったので
フィンクスの膝に蹴りをかましてやった。


お前、自分がもらってないからって
俺に当たるなよ!


フィンクスの持っているクッキーの袋を取り上げて
窓に放る。


いらねぇよこんなもん。


あ!お前、バカ!





フェイタンと口をきかなくなってしばらく経つ。
一日に吸う煙草の量が
二箱に近づいてきた頃、団長は帰ってきた。






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