五匹目



なるほど。



団長は広場の中央に投げ捨てられた
廃材に座って、私たちを見渡した。


お前らの話を整理すると


女は並行世界から来た。

並行世界では、HUNTER×HUNTERとやらの漫画に俺たちが描かれている。

女はそれを見ていたので俺たちの一部の名前を知っている。

何故女がここに来たのかは
女自身も知らない、とそういうことだな?


団長の言葉に、フィンクスは反論した。


並行世界とか言ってるのは、マチやシャルナークだけだ。
俺は、裏で何かが糸を引いてると思ってるぜ。


ノブナガや私、フェイタンは
そうだ、と言わんばかりに頷いた。


団長は、なるほど、と小さく呟く。 


その可能性もあるだろう。

パクノダ、お前は本人が操作されている場合でも
物質に留まる記憶を読み取ることはできるんだな?


パクは団長に視線を向ける。

ええ。
身体だけじゃなく、服やアクセサリーにも記憶は宿ってる。それは意識とは別の話よ。
記憶が嘘をつくことはできないわ。


団長は物憂げに両手を組み合わせた。


訪れる静寂の中
定期的にフェイタンがナタを地面に突く音だけが響く。


いいだろう。

あくまで仮説だが

並行世界が存在したとしよう。

確かにシャルの言う通り
その並行世界に自由に出入りすることができれば
俺たちにメリットはあると思う。

例えば、念能力以上の能力があるかもしれないし
現存する武器や兵器以上のものがあるかもしれない。

現実世界で失われたお宝も
並行世界上では存在するかもしれない。

ただ、これはあくまで仮説だ。

この仮説を100%信用して
俺たちが動くのはバカバカしい。


そこでだ。


シャル、マチ、フランクリン、ボノレノフ、パク。
お前らは並行世界について情報を集めろ。
手段や方法は問わない。
女に対しても、お前たちの好きにしていい。



残りのメンバーは
女を売り捌く準備をしろ。

1ヶ月、お前たちに与える。

商品としての価値を高めたほうが
値段が上がることは勿論知っているな?

1番値段の高いルートも
お前たち自身で調べるんだ。



既に察しはついていると思うが


団長はシャルナークを見た。
シャルは感情のない顔で団長を見つめ返す。
夕陽が団長の顔を赤く照らした。


並行世界について調べるお前たちに与えられた期間も、1ヶ月だ。


それが過ぎればゲームオーバーだ。


勿論、その間に黒幕が現れれば
その時点でもゲームオーバー。

その場合、女は売り捌かなくても良い。
始末しろ。



団長の言葉のあとに、続ける者はいなかった。


日が暮れる頃、私とフェイタンは
飯を食いに行こう、というノブナガと一緒にシティへ出た。


雰囲気の良いイタリアン料理の店で
ノブナガがこんな場所を知っていることに心底驚いた。


まさか、拘束まで解くなんてよぅ


信じられるか?
とノブナガは続ける。



拘束を解くように提言したのはシャルだった。


パクに質問させてもダメだったんだ。
アイツが並行世界に何らかの能力を持っているとしたら
行動の中に必ずヒントはあるはずだ。

俺らが監視するから、拘束を解いて欲しい。


その常識外れな提言に、団長はまさかのOKを出して、私達をざわつかせた。


いいだろう。

その代わりに、マチの糸での追跡と
交代での見張りが条件だ。

絶対に逃すな。



ノブナガはピザを頬張ると
豪快に咀嚼する。

フェイタンは食欲がないようで
アイスティーを飲むだけに留めた。


並行世界だかなんだか知らねぇけどよ
そんなモンに
なんでシャルも団長も
食いついてるのかわからねぇ。


私はノブナガの食べるピザを1枚失敬して
口に含む。
バジルソースが効きすぎて
お世辞にも美味しいとはいえなかった。


いいんじゃないの。
1ヶ月で売っぱらえるんだから。

大金引っ張るには
少し歳が行きすぎてる気もするけどね。



私の言葉に、ノブナガはうー、と唸り
通りかがった店員に白ワインを注文した。



人身売買のルートについて
それぞれが知っている情報を提供しあい
その日は解散となった。


フェイタンにいわせれば
折角の獲物を取り逃したような気分なのだろう。

車には乗らず、不機嫌な様子で
駅に向かって歩いて行った。


アイツ、今日は複数殺すと思うぜ。



ノブナガは丸い月を見上げながら呟いた。


遠くで、車のクラクションが鳴っている。











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