めめんともりとろーてしょん



名前をフェイタンだと知った。





フィンクスが
フェイタンに公用語を教えるようになったけど
私はただ隣で聞いているだけだった。


フィンクスが誰かに盗られてしまうような
そういう嫉妬に似た感情を抱いていたのかもしれない。


だから、フィンクスが瓦礫の山を探索に行ったまま戻らず
私とフェイタン、2人で取り残されたとき
私からは絶対に口を開かなかった。


なぜオマエはここにきた


フェイタンは私の目を見てそう聞いたが
すぐに視線を逸らして無視した。


もう寒くなり始めていて
外で夜を明かすのは無理がある気がしたけれど
フィンクスが戻ってこないうちに
寝床に行く気にはなれなかった。


ワタシ、ここにきた


フェイタンは
手に取った小さな廃材を放った。



生きるため



確かにフェイはそう言った。

一瞬ドキッとしたけど
その言葉に応える勇気は持ち合わせていなかった。




フィンクスはちゃんと戻ってきて
腕いっぱいのパンを抱えていた。


大人達から奪った、戦利品だという。


私達が、成長しているということに気付いたのも
この頃からだ。

食べるものをしっかり食べていれば
飢えた大人を負かすことなど
容易いことだった。

強ければ、食べ物が手に入る。

私はパンを食べながら
なんとなくそう思った。

フェイタンは不味そうにパンを齧る。

それはまるで、生きるために齧っているような

そんなふうに、私には見えた。









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