まるさんかくしかく

それは景色ですらなかった。

とこまでも続く廃棄物の山に
私はただ埋もれているだけだった。

何か尖ったものを踏んで
足の裏から血が出るのは日常茶飯事だったし
たまに空から降ってくる食べ物は
大人達が奪い合っておこぼれすら預かれなかった。




転がっていた缶詰を拾うと
中には白くカビの生えた固形物が2個入っている。

異臭のするそれを、迷わず口にした。

味は分からない。
噛まずに飲み込んだ。




その後に全部吐いてしまったから
少し悲しくなって
苦しみの中でなぜか涙が出てきた。


おい、大丈夫か。


フィンクスは私の骨張った背中をさすり
吐瀉物でまみれた口を拭った。


食べられるかどうかは
まず俺に聞けよ。





そんなこと聞くわけない。 

私が手に入れた食べ物は横取りさせない。



私達は空腹で眠れなくて、悴む身体を懸命に動かしてゴミの山を漁った。
夜は寒いから大嫌いだった。




おい、見ろよ。

ぼやけた視界の中で辛うじて陽は出ていると認識できた、あの日。

フィンクスは落ちている麻袋に駆け寄って
中身を弄った。

ポテトだぜ!
こんなに沢山ある


フィンクスが無我夢中でほうばっているのを遠目に
すぐそばにいる私は動くことができなかった。

もう立ち上がる元気もなくて
あと少し、あと少しだけ歩ければ
あと少しだけ、生きられるのに。




ぼやけた視界の中
眩しい陽の光に目を細めた。



唇に柔らかい感触を認識して
その途端何かが口内へ入ってきた。


飲み込めよ。
大丈夫、お前は死なせない。


フィンクスの声が
私の鼓膜を震わせた。






フィンクスが見つけた『穴場』は
私達だけの場所になった。

1週間に一度
必ずここに麻袋は降ってきた。

大人達はまだ知らない。

死の淵を彷徨っていた私も
少しずつ元気を取り戻した。


瞬く間に回復できたのは
中に入っていた食料が
ポテトばかりだったからかもしれない。


再び立って歩いたり、走れるようになったし、
フィンクスと笑い合う時間も増えた。

食べ物があるという安心感は
人を信頼する余裕をももたらした。


麻袋の中に入っていたのは
じゃがいもやさつまいもばかりではなく
袋に入ったジャーキーや
カラフルなお菓子もあった。


初めてお菓子を食べた時は
咀嚼することも忘れて夢中で口に入れた。

最後の一つはフィンクスと大喧嘩になった。

私達はそうやって
時を重ねれば重ねるほど
お互いを自分の一部だと認識していった。


落ちていく夕焼けを
フィンクスと手を繋いで眺める。
それが私たちの日常になっていった。


フィンクス、どこにも行かないでね。


お前も、どこにも行くなよ。


うん、行かないよ。


私達は 2人で1つだから。




私達の場所が大人達にバレたとき
フィンクスは私を庇うように戦った。













「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -