明日私たちは人生の旅に出る

アジト周辺に戻ってきたのは
3年振りくらいだった。
だから、懐かしく感傷的な気分にもなった。


この辺りは、シティから車で1時間程度の郊外で
まだところどころに緑の残る気持ちのいい場所だ。

アジトにきたばかりのとき
私とフィンクスでよく散歩した。

散歩というか、修行と訓練のために使っていた
空き地まで歩くだけだが
それでも2人でよく歩いたことを覚えている。


畑の真ん中の舗装道路に
大きなカシの木が生えていた。


変わらずにそこにあることに驚き
少し嬉しくなった。


フィンクスは、この木に幾度となく挑戦して敗れていた。

一撃で巨木を倒すには
それに伴った下地がなきゃダメだよ。


わたしが木ににもたれかかりながらそう言うと
フィンクスはあからまに怒った。


うるせえ!
じゃあ俺はいつまでもあのウヴォーギンには勝てないって言うのかよ?!

そうだよ、ご愁傷様。


あの頃のフィンクスは
負けず嫌いで、ちゃんと目指すべきものをわかっていて
それに向かって努力していた。

そんなフィンクスが愛しくて
だから、私は約束してしまったんだと思う。




畑道を抜けると、舗装道路を挟んで高架下に出る。


そこに大きな空き地があって
遥か遠くのシティのための
貯水池になっているという話だった。

空き地の周りはチェリーの木が植えられていて
春になるとピンクの花をたくさん咲かせる。

皐月も後半に迫ろうとしてる今は
若々しい葉がいっぱいになっていた。

空き地の周りから緩やかな坂になって、下に降れた。地上から5mほど下に掘られた
この広大な空き地が、大雨からシティの人間たちを守る。

そう考えてると、なんだか白々しくて笑えてくるのだ。

その恩恵に預かって、空き地にはいっぱいに草が覆い繁っていた。
この青々とした景色は
いつも人間たちの虚しい努力を彷彿とさせる。


それでも、私が自身の能力を得たのもこの場所だった。



蛇?
なんで蛇なんだ?


可哀想だから。


フィンクスはその答えにも、怪訝そうな顔をした。


可哀想って何がだ?


その日は満月で
月光で草花が淡く照らされていた。
風は冷たかったのか、暖かかったのか
思い出せない。

団長に教えてもらったの。

昔、ヘビは
重大な間違いを犯して

あらゆる生物から忌み嫌われ
一生地を這って生きなければならないと

神様にそう決められたって。


フィンクスは顎のあたりをポリポリと掻きながら
腕を組んで私を見据えた。


具現化するには、そのモノに対して
強い思い入れがなきゃダメだぜ。

その程度で、ガツンとしたパワーの出る技
会得できるっつーのかよ。


ガツンとした技に引っかかって
私は大笑いした。


そう、あの日に
私はちゃんと決めたんだと思う。


それからはちゃんと蛇と共に生きている。


初めて蛇が具現化できたときは
フィンクスと手を叩いて喜びあったし
フィンクスが腕を回してパワーを累乗にする
リッパーサイクロンを考案したときは
シャルナークと腹を抱えて笑った。



蛇を飼うようになって
もう何年も経ったのに
この街に帰ってくると、私だけの身体のような錯覚に陥る。



どうして蛇にしたの?

マチはシティで奪ったというスーツケースの中身を
一つ一つテーブルに出して並べながらそう聞いた。


私はランプの火がゆらゆらと揺れるのを見ながら
呟くように答える。


蛇が可哀想だな、と思ったの。

なんだか私みたいじゃない?

え?違うよ、嫌な意味じゃなくてさ。

流星街に捨てられただけで
他の人間と同じように生まれたのに
不自由を強いられたの。

捨てられた人間ってだけで忌み嫌われてね

だから、かわいそうだなって思ったの。

うん、そう、だって蛇だって役に立つって
見せしめたかったのよ。

あまりにもツールとしての要素が大きすぎて
戦闘能力は落ちちゃったけどね。

あはは、そう、元々弱いんだけどさ。

でも、フェイとフィンクスがいるから。

うん、あの2人がちゃんとカバーしてくれるから
だから、私もあの2人ができないこととか
蜘蛛に足りないものを、蛇で補いたかったのよ。

あー、うん、ありがと。



それでマチは、何にするの?


え?糸??


なんで?








×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -