だから君は何も信じない

ずっと前からココアを飲まなくなったのに
フェイタンはやましいことがあるとココアを買ってきた。

殆ど空っぽの冷蔵庫に入ったココアを見て
昨日何があったんだろう、と思った。


甘い飲み物は嫌いだ。
正確に言うと嫌いになった。
それは、もう随分前からだったけど
今日は形だけでも、飲んでやろうという気になった。


だから躊躇うことなく
紙パックにストローを差し込んで
少しだけ吸った。


それが予想以上に甘すぎて
口をつけてしまったことに後悔した。


リビングに入ると、フェイタンがソファで横になっているのが目に入る。
足をこちらに向けて寝ているが
相変わらずブーツを履いたままだったので
心の底から腹が立った。


10年経った今でも
土足で室内に入ってはいけないことが
まだ分からないらしい。




私はダイニングテーブルに腰掛けて
壁にかかる時計をじっと見た。


部屋の中にいると
外とは遮断されたような感覚に陥る。
まるで世界に自分とフェイタンだけでないのかと錯覚する。


ココアの甘さが
脳の奥底までじんわりと染みる。

それがやっぱり受け入れられなくて
中身少しだけ残った紙パックを
そのままゴミ箱に放り込んだ。



カチ、カチ、カチ、相変わらず秒針は
均等に時間を区切っていた。


近くで寝息をたてるフェイタンが
今より少しだけ背が低くて
あどけない表情の少年だった頃。


私達も世界から不要の烙印を押されて
ゴミ箱に捨てられていた。


あの場所はいつだって
酷い異臭がして
身体の芯まで凍えるような寒さで
地面が見えないほどのゴミの山だった。


私達は、1番高い廃棄物の山に登って
踏みつけた瓦礫で、足の裏がチクチクと痛いのも忘れて
夢中でそれを指差した。


あの希望の流れ星を。



カチ、カチ、カチ
無機質な音がだんだん大きくなって
忌々しい静寂が耳にまとまりつく。


白い壁を見ていると
吸い込まれそうになるから目を閉じた。


目を閉じるとやっぱり、あの星たちが降っている。
ずっと向こうで、キラキラと瞬いている。




あの日みた星も
私達が立っていた場所も
今息をしているこの場所も
全部掃溜だね。


希望なんて、この世界のどこにもなかったね。





だけど



私達が、安心して眠れるようになったのは



一体いつからなのだろう?






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