蟹座



窓からの明かりが
部屋の暗闇に白いモヤを描き始めた頃
私は立ち上がった。

眠たい目を擦りながらリビングに向かうと
フェイタンがダイニングテーブルの上に転がっていた。

多分、私の気配には気付いていて
もしも攻撃すれば、きっちり対応してくるはずだ。

流星街からの付き合いである私であっても
完璧に心を許しているわけではないらしい。


丸くなっているフェイタンを一瞥すると
ウォーターサーバーから冷たい水を注いだ。






6時間遅れだけど
ま、いいでしょう。


電話口から聞こえてくる
シャルナークの歯切れのいい口調が
私を苛立たせる。


早速だけど、明日からきっちり働いてもらうからね。
じゃ、夕方5時に本拠地で。


一方的に電話を切られ
衝動的に携帯を投げ捨てた。



殺されたいのか?オマエ



いつのまにかドアの横に寄りかかっていたフェイタンが
面倒臭そうに腕を組み直した。



私の部屋に勝手に入らないで欲しいんだけど。



フェイタンを見ずにそういうと、
ヤツは殺気を隠そうともせずに此方へ向けた。



ハッ。


少しずつこちらに向かってくるフェイタンは
こんなに近くても足音や呼吸をする音すら聞こえなかった。



ワタシを見るよ。


ワタシを見て


もう一度同じセリフ言てみるね。



静かな声とは裏腹に
喉を締め上げる手には容赦がなかった。


フェイタンの黒い瞳と目が合う。
楽しくて仕方がないとばかりに目を細めるこの男にあがらうことのできない自分の能力を心から憎んだ。







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