牡牛座



シャルナークからの着信履歴は13件だった。

寝転んだままの体勢で、
まだ微睡んだ目でそれを一瞥すると
携帯を床に放った。

うざい。

スイッチが入らないと、とことん何もしたくなくなる。
それが自分という人間の中で1番嫌いなところだった。

もう一度寝よう。
それで忘れよう。
現実逃避を始めようとした丁度そのときに
ヤツは帰ってきた。


おい。


玄関の方から私を呼びかける声がする。

もちろん無視して目を瞑る。

ヤツのブーツの底が
磨いたばかりのフローリングを鳴らしているのが聞こえて、心底ムカついた。


イライラして起きあがろうとした瞬間
私の腹に衝撃が走った。

驚いて目を開けると
布団が血で染まり、ベッドのフレームから
床に滴っている。


やられた。

そう思ってもう一度目を瞑った。

最悪だ。
今日は本当についてない。



おい。
殺されたくなかったら起きるよ。


うっすらと目を開けると
返り血をしっかり浴びたフェイタンが
鋭い眼光で私を見下ろしている。


なんで帰ってくるなりこんなことされなきゃいけないわけ?


私が言い返すまもなく
腹に刺さった傘の先端が更に深く突き刺さる。
フェイタンは何の言葉も返さず
ただ私を睨みながら突き刺す右手に力を込めた。


分かった、起きるから抜いてよ。


私は激痛に耐えながら
それでも顔は何でもないという顔を取り繕って
(取り繕えてはいないだろうけど)
上半身をゆっくり起こした。

フェイタンは私に抜かれた傘を
汚いものを見るように一瞥してみせる。


オマエ、いつまでも足手纏いか?


私が身体を治しているのを見ながら
フェイタンは低い声で私に言った。



別に、私が参加しないくらい何てことないでしょ。


手で腹を触り、完治したことを確認する。
固まった血がザラザラとする以外は、元に戻ったようだった。



別にオマエが参加しないことはどうでもいいね。
遅れることが問題と言てるよ。


フェイタンは傘の先端を私の首に向ける。
鋭い殺気に、流石の私もフェイタンの目を見ることはおろか、言い返す気にもなれなかった。


オマエと違て忙しいね。
一日でも遅れれば殺す。

今日中に自分の仕事をすることね。
命が惜しくないなら、話は別だが。



フェイタンは最後に一瞥すると
静かに部屋を出ていった。



深いため息をついてベッドに横たわる。


死ねばいいのに、あいつ。


額に浮かんだ玉粒のような汗が、こめかみを伝って流れていった。




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