夏至にだけ咲く花



たまに、ベッドの上に仰向けに寝転がって
自分の手をまじまじと見つめるフェイタンを見かけた。


なんだか理由を聞いてはいけない気がして
見ては見ぬふりをしてきたけど
ついに聞いてしまった。


フェイタンが黙って私を見つめるから
それが少し怖くて
静寂の中に飲み込まれてしまいそうになった。



何故か、なんて


フェイのくちびるがゆっくり動く。



知らないね。



あっちへ行け、とばかりに手で遇らうフェイを
なんだか不憫に思った。


本当は少しだけ分かっていたから。


昔から、フェイタンはストレスを感じると
腕を掻き毟る癖があった。
潔癖なフェイは
爪の間に入る血や皮膚が嫌なんだろう。
執拗に洗い流しているのを知っている。


流星街にいたときも水溜りに屈んで
そうやってやっていた。

その風景はいつからかあまり見かけなくなったけど
ああやって爪を眺める時間はそれに比例して多くなっていった。



フェイ、人の血を見るのは平気なのに

自分の血は嫌なんだね。



私はシッシとあしらわれた仕返しに
そうやって嫌味を落として部屋を出る。


ドアを閉める寸前、フェイの声が背後から聞こえた。




ゴミの流した臭い液体を

好きになるヤツがどこにいるか。



ドアを閉めると
廊下の奥に、薄暗い玄関が見える。

フェイタンが盗んできた黒い傘は
3日前からあそこに立て掛けてあった。



自分の殺した人をゴミと思えるようになるには
私にはまだ時間がかかりそうだけど



フェイタンは
同じ環境で育ってきたはずなのに
一体どこでその『言い訳』を手にしたんだろう。


リビングに戻ってソファに座った。
付けっぱなしのテレビからは、くだらないバラエティ番組が垂れ流されている。



何も知らないで
何も苦しまないで笑えるのだ、あの人たちは。



私達には、戸籍すらないのに。





ああ、
目を瞑ると人々の嘲笑が聞こえる。
それは私に向けられたものですらない。


きっと誰も知らない。
知らないという罪を犯した共犯者達は
昼下がりのリビングで笑い声を立てていた。
















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