ドンキホーテファミリーとやらが主催するオークション。
そこに、ゴルゴルの実と言う悪魔の実シリーズのひとつが出品されることを知った。
チャンスだと思った。悪魔の実の力を手に入れればこのどん底のクソみたいな人生をやり直せる。
商品にされた札付きどもを唆し、確実に、手に入れる算段をつけた。

計画は恐ろしいほど順調に進み、おれは騒動に浮足立つ会場のなかでチャンスの眠るその箱を見つけ出した。
震える手で箱を掴んだとき、とん、と背中に軽い衝撃を受け、勢いよく振り返る。背後にいたのは女だった。足枷こそないものの、手には錠がついており、商品であることが見てとれた。


「おれの邪魔をするな。殺すぞ」


振り払うまでもなく箱をかかえて踵を返すと、女は鎖をじゃら、と鳴らしながらおれの腕を掴んだ。


『その箱じゃない』


女の目がおれのすぐそばの棚に向く。


『1番手前、上から2段め、右から4つめ』


言われるままに目で追うと、そこには確かに頃のよい箱があった。
信じていいのか。葛藤があった。悩む数秒、さほど遠くない場所から諍いの音が聞こえる。時間がない。


「……」


おれは自ら選んだ箱と女の指す箱の両方を持ち出すことにした。
女は自分の指した箱をおれがかかえたのを見て満足そうに微笑んでいた。妙な奴だ。どうしてこんなことを。


「さっさと逃げないとまた売り飛ばされるぞ」


おれの言葉も聞こえているのかいないのか、騒がしい足音の近付いてくるほうを向いて動かない女。
気付いたときには、折れそうな腕に箱を押し付け身体ごと抱きかかえていた。


「おまえが持て! 空だったらどうなるかわかってるだろうな?!」


あとはなりふり構わず走るだけだった。銃声や刃物の交わる音をやり過ごしてただただ走った。あのときのように。
腕のなかの女は、箱を大事にかかえたままぎゅっと身体を縮こませていた。


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