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「参ったなー」
「仕方ないですよ…待機命令なんですから」

項垂れるレイナにピアーズは銃などの装備を下ろしながら冷静に言った。

数組に別れての建物の内部調査に、レイナは密かに好意を寄せるピアーズと組めたことで張り切っていたのだが、彼女が怪我を負ったことで足止めを食らってしまった。
ただ、ここが安全な場所だったことが唯一の救いだ。

せっかく先輩としても腕の見せどころだったのに……格好悪いじゃない…

「私これぐらい平気だよ!」
「俺に怪我人とペアで行動させる気ですか?じっとしててください」

足の怪我だ、確かに足手まといになる上に、彼女を庇うことによりピアーズにも危険が及ぶ可能性がある。

「でも、隊長と合流だなんて、私絶対に怒られるじゃない…」

レイナの足首の怪我を診ようとピアーズは無理矢理彼女の肩を押して座らせた。

「俺だって怒ってますよ、これぐらいの怪我ですんだから良かったけど……」
「ピアーズ痛い!」

少し乱暴に傷口を巻かれ声をあげてしまった。

「不注意で命を落としたらどうするんだ……」
「ごめんなさい…」

後輩に叱られるなんて情けない…。
飽きれ顔のピアーズは溜め息をついた。

「レイナさん、俺のこと気にするのも良いけど、私情を持ち込みすぎですよ」
「ええっ!?別にっ、ピアーズのことなんか気にしてないよ!」
「………………あ、ここにも傷が」

ピアーズはとぼける彼女の言葉を無視して、ポツリと言うと首筋を平然とペロリと舐めた。

「ひゃっ…………な、何するの!?」
「手当て、ですよ」
「んっ……くすぐったい…そんなとこ怪我してないってば」

ゆっくり押し倒されると首筋に執拗に舌を這わせてくるピアーズの胸を力なく押す。

「嫌なら突き飛ばしてください、それか俺が言ったこと認めますか?」
「やめっ……違うのっ……ん…」

すっかり力の抜けてしまったレイナは鎖骨を露にさせられるとチクリと痛みが走りキスマークを付けられた。

「いっ!」
「痛かった?だから傷があるって言ったじゃないですか」
「んっ、ピアーズ……」

顔を覗き込めば目を潤ませた彼女にさらに苛めたくなる。

「あんたの気持ちなんてとっくに知ってますよ」
「何の、こと?………も…もう隊長達来るから、ね?」

微笑んでくるピアーズに息を整え宥めるように言う。
同じ部隊で毎日顔も合わせるし気まずくなりたくなかったから、今までばれないようにしていたのに…、どうしよう…

おもむろにピアーズは無線に手を掛けた。

「隊長、こちらピアーズ。待機だったのですが、敵が現れたため回避、移動します。また安全の確保が出来次第場所を伝え、応援要請します」
『了解、無理はするなよ』

ピアーズの"敵"という言葉にレイナは慌てて辺りを見渡すが、そんな気配はない。
無線を切ったピアーズは、不思議がっている彼女に再び微笑んだ。

「時間はありますよ。まだとぼけますか?」

敵は目の前のピアーズのことだと彼女はようやく気付いたが、時はすでに遅かった。



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年下ピアーズに叱られるのって良いなと思うのですが。
裏へ続いてみようかな…
130808

あんたの気持ちなんてとっくに知ってる
title by 確かに恋だった


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