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バイクを飛ばしながらジェイクは風の心地良さに目を細めた。

「ジェイクーっ!飛ばしすぎー!」
「あ?聞こえねー」

後ろで叫ぶレイナが何を言ってるのかは見当がつくが聞こえないふりをする。
わざとスピードをもう少し出してやる。
お腹に回された彼女の腕が少しキツく絞められたのがわかる。

「わざとやってるでしょ!?」
「気にすんな!」

まだ何か叫びながらしがみつくレイナにジェイクは満足そうに笑った。



* * *


しばらく走らせて着いた海岸で二人して並んで座る。
今日は久しぶりのデート。海が見たいとのレイナのリクエストがあった。

「なんで海なんだよ?」
「何となく、デートっぽいから」
「ふーん…」

女の考える事はわからないと思いながら、ふと彼女の方を見ると、キラキラ光る波を映した横顔がとても綺麗でドキッとした。

「気持ちいい……今日は連れてきてくれてありがとう」
「ああ…」
「ねぇ、ジェイクは………私といて良かったって思う?」
「なんだよ急に…」

こちらの方を見ないで、静かに立ち上がったレイナは海の方を見ながら切なそうな表情を浮かべた。

「私が会いたい時に会って、私の行きたいところへ行って……なんか私のわがままみたいだなーって思って」
「……そんなこと考えてんのか?」

自分から表現するのが苦手なジェイクにとっては"会いたい"と言われる事が嬉しいのだが、思ってるだけではなかなか伝わらない。

「どうして私といてくれるの?」

レイナが消えてしまいそうな気がして、顔のすぐそばにあった彼女の手を不意に握った。
すると少し驚いた顔でレイナが、やっとこっちに顔を向けた。

「嫌なら会ってねーよ。なんか不安なら…ずっと傍にいれば良いだろ」

今度はジェイクの方が照れからか顔を背ける。
彼なりの精一杯の言葉に心が温かくなったような気がした。

「じゃあ、ずーっといるよ?ジェイクがどんなに嫌って言っても」
「ああ」

隣に座り直すレイナに顔を覗き込まれたので、さらに背けぶっきらぼうに答える。

「……私のこと、好き?」
「…ああ」

ジェイクの相変わらずの返事にレイナはふふっと笑みを漏らし、ジェイクらしい、とポツリと言った。
彼に握られた手はずっと暖かくて、レイナもそっと握り返した。



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高校生が自転車二人乗りデートみたいな話だな……
130603

言えない言葉
title by TOY


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