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道路を外れたところに大型バイクが停まっている。眼下に広がる街並み、ここはきっと夜は素晴らしい夜景スポットなのだろう。
太陽が一番高い位置にある今は他に人もおらず、この見晴らしの良い木陰で、ジェイクとレイナだけが並んで座っていた。

「ね、美味しい?」
「ん…」

レイナはジェイクの顔を覗き込んだ。彼は短く答えただけでサンドイッチに齧り付く。そんな姿に小さく溜め息を漏らした。

「…折角作ったんだから、もうちょっと味わってくれても良いじゃない」

せっかくの貴重な二人でのんびり出来る時間。今日は天気も良い事だし、外へ出掛ける事にした。このサンドイッチはレイナが腕によりをかけて作った物だ。

まあ、作ったって言っても簡単な具材だけ、後はパンに挟むだけなんだけど…。
自分の分を食べながら、ジェイクに目をやった。不満に思う部分もありながらも、彼の食べる姿は好きだ。口の端に具の卵がついていて、決して上品とは言えないが、いつも彼の食べっぷりは見ていて気持ちが良い。

いかにも男の子、というか……、しっかり食べてくれるのは何だかんだ言って嬉しいよね。

「卵…付いてるよ」
「えっ…」

指摘にジェイクは逆の頬を拭い、レイナは軽く吹き出しながら指でそっと取って自分の口に運んだ。
ジェイクは目を見開いてから、少し伏し目になる。これは照れている証拠だ。

「自分で取れる…。やめろよ、ガキみてーだろ」
「うん、美味しい」

レイナは今まで上の空だったジェイクへの仕返しとばかりに、無視して自画自賛した。
ジェイクはフンと鼻を鳴らし次はハムチーズサンドを掴むと食事を再開させる。レイナがまたその食べっぷりに見惚れていると、口を開けた瞬間の彼と視線が合い、見られていた事に気付いたジェイクが居心地悪そうに眉を寄せた。

「何だよ…」
「……惚れ惚れする食べっぷりだなって思って」
「味わえって言ってたのは何処の誰だよ」
「あれ?聞いてたの?」

レイナは誤魔化す様にチキンサンドを頬ばった。口に入ったまま、美味しいって全然言ってくれないんだもん、と不明瞭に呟いた。その言葉にジェイクは最後の一口を放り込んで、ポツリと言う。

「旨いよ…」
「ん?」
「レイナの料理は何でも旨いって言ってンだよ」

ぶっきらぼうに言い、おもむろにペットボトルの蓋を開けると中身を喉に流し込んだ。
そんなジェイクに、驚きからレイナはまだ噛み足りないのにごくんと飲み込んでしまった。彼は強面だし、口は悪いけど…こうやってきちんと言葉もくれる、たまに、だけれど。
レイナの沈黙に耐えられなくなってか、照れ隠しに近くにあった石をあさっての方向に投げている彼に頬が自然と緩んだ。

「ジェイク……可愛い」
「は!?折角褒めてんのにお前…!」
「フフ、嬉しい!!また作ってあげるね!」

ニコッと笑顔を向けるレイナを見てさっきまで照れていたジェイクは打って変わって口の端を上げた。彼は片手をレイナにすぐ傍につくと腰を浮かし近づく。

「ソース付いてる」

言葉に間髪入れずにレイナの頬を舐め、ついでとばかりに彼女柔らかい唇も味わう。
レイナの手からサンドイッチがポロっと落ち、驚きから体を引いた彼女を押し倒しジェイクが覆い被さるようになった。

「んっ、…何するのよっ」

顔を赤らめたレイナに、形勢逆転した事で余裕の表情でジェイクが見下ろす。

「惚れ惚れする食べっぷりなんだろ?ソースと一緒に食ってやろーかと思って」

そう言うと再び、唇が重なる。少し荒い口づけに、クラクラしながらレイナも答える様に彼の首の後に手を回したのだった。



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ここ、外です←
私はお上品に食事する人よりガッツリ食べる人が好きでして…ジェイクって男っぽく食べてくれそうだな、と。
食事も恋愛もガツガツ行ってほしい。
150703

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