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「ピアーズ、レイナを探してきてくれないか?」
「あ、はい」


またか、と肩をすくめながら隊長の言葉に従う。

クリスをはじめ、何かとレイナに用事をつける者はBSAAの中にも多い。
まあ、それだけレイナが慕われ、仕事も出来るのだが‥

すぐどこか行くのやめて貰えないかな‥


先輩であるレイナを探す任務をクリスに命じられる事が多いピアーズは、どこから探そうかと足を進めた。


* * *


廊下で立ち話をしている隊員たちの姿を見つけ、レイナの行方を知らないか聞こうかと思い近づいていく。

「おい、見ろよ‥アレ」
「色っぽいな…。俺、今度休日誘ってみるかなー」
「お前なんか無理だろ、ははっ」

彼らの会話の内容が聞こえるとともに、視線の先にレイナの姿を発見した。

ピアーズの接近に気付いてすらいなかった隊員たちを少し睨むように横をすり抜ける。


「レイナさん!‥探しましたよ!」

少し声を張って呼び掛ける。


「あ、ピアーズ!ごめんなさい、トレーニングで汗かいちゃったから」

苦笑しながら、シャワールームの扉を指差すレイナ。
今廊下に出てきたところなのだろう。ランニング姿で、肩に掛かった髪は濡れていた…

その姿にため息をつくピアーズはレイナの傍で足を止めた。

「隊長が呼んでます」
「すぐ行くわ」

「あと…」

レイナはタオルを首にかけ、続きを聞こうと首をかしげてみせる。
こういう無意識に可愛い仕草をするところが危なっかしい。

「こんな格好でうろつかないでください‥」


レイナに一歩近づいたピアーズがタオルで髪を撫でるように手を添える。

頬に手が触れるも全く動じないレイナはまた苦笑する。


「だって、暑くっ…」

言い終わる前にピアーズの唇により言葉が遮られる。


「男ばっかりなんだから注意しろってことですよ」

一瞬のキスに顔を離し、ぶっきらぼうに言い放つ。ポカンとするレイナの髪をくしゃっと拭きながら、廊下の先の隊員たちに優越感たっぷりに視線をやる。
なにやらコソコソ話しているが気にならない。

「もう!びっくりするじゃない、ピアーズ!」

はっとして、少し顔を赤らめ抗議の声をあげるレイナから手を離し、先に歩き出す。
反応が可愛いくてもう少し長くキスしてれば良かった、とも思う。

「レイナさんは隙だらけなんですよ」
「後で隊長に言いつけてやるんだから!」

ピアーズの後を追うレイナの方へ顔だけ軽く振り向き意地悪く口の端を上げる。

「好きにしてください」

まだ何か言いたげたなレイナを無視して歩くピアーズだが、この後、クリスから長い説教を受けることになった。



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ピアーズはちょい黒。
若いし、気持ちうんぬんより、手が早そう(笑)
130523

あなたと噂になるのも悪くない
title by 確かに恋だった


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