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今朝はいい目覚めではなかった。

「おはよう」

俺のベッドに潜り込んで来ていたのはレイナ。
昨日の俺はよほど疲れていたらしい。レイナが来ていたことに気づかないなんて油断のしすぎだ。
それに…、彼女が下着姿である事に頭痛がした。

「最近来てなかったのに、どうしたんだ?」
「お兄ちゃんが忘れられなくて」

ニッコリ微笑む彼女は腹黒ささえ浮かぶ。
いや、実際したたかなのは知ってる。兄妹なのだから。
そして、今は別で暮らすレイナがこうして来るということは男と別れたからだ。

「冗談を言うな。前の……医者だったか?アイツはどうした?イイ男だったんだろ?」
「全然ダメ……レオンの方が良い」
「…………おいおい」

幼い頃からお兄ちゃんっ子で、俺の行くところについてくる、可愛い妹だった。年頃になって、彼氏も出来たりもし出したが、どうも続かないようで、すぐ別れては俺に愚痴を言いに来る。兄離れが出来ていない………。
と、同様に俺もレイナが別れたと言いに来る度、俺の方が良いと言われる度に、優越感が込み上げるのも事実だ。妹離れが出来ていないんだ、俺も。

「はあ……この世の中にお兄ちゃんみたいに紳士な男の人っていないの?」

紳士?レイナにまで言われるとは、……俺は付き合う女性には"優しすぎる"と言われてフラれる事なんて珍しくない。つい昨日だって言われたところだ。…泣けるぜ。

「いるさ、……レイナが良い子にしてればな」
「もう!お兄ちゃんだって全然彼女出来ないし、出来ても長続きしないくせに!」
「紳士じゃない俺に問題があるんだろうな」

とぼけて見せると、頬を膨らませた彼女は未だに寝転んだままの俺の胸に甘える様に上半身を預け、見下ろすようにしてきた。柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。

「お兄ちゃんに問題ないよ!こんなにカッコいいのに…」
「退くんだ…」
「やだ、ハグしてくれないとやだ」

我儘を言うところは幼い時のレイナのままだ。反面、女を武器にしてくる仕草……、その仕草に俺に別れ話をしてきた元彼女が言った言葉が脳内に蘇った。
"貴方は良い人すぎるわ、女の扱いも完璧。でも何処か欠点がないと、私はずっと背伸びをしていなきゃいけない。もう疲れたの"
つい血が頭に昇り、視界を逆転させてレイナを押し倒すようにすると、驚いた顔をしている。

「好きでフラれてるんじゃない……口出しするな」
「………」
「……俺だっていい部分ばかりじゃない」

やつ当りでしかない。虚しさが自分の中で渦巻き、言葉を発するうちに冷静さが戻ってくる。すると、レイナが全く動じないで俺の目を真っ直ぐ見ている事に気がついた。

「知ってるよ…、だって、こうでもしないと抱いてくれないでしょ?言ったじゃない、"お兄ちゃんが忘れられなくて"って」

俺の前髪を愛しそうに掻き上げる彼女からは幼い面影などなく妖艶で、我が妹ながら扱いづらい女だと思った。
導かれるようにレイナの唇に自分のそれを重ね、深く互いの舌を絡める。

「悪い子だ」
「お兄ちゃんだって」
「そうだな」

観念したように言えば、レイナはクスりと笑った。
お互いを悦ばせる方法など、随分前から知っている。結局はここに帰ってくる俺達はもう他の相手など真剣に考えてなんていないのかもしれない。

「……ねえ、愛してる?」
「もちろん。たった一人の妹じゃないか」
「早く来て?……レオン」

堕ちればそこに快楽があるんだ。
もう今更後戻りなんて出来ない。



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アンケート企画より。
レオン、やっぱり人気だなー、と再確認。
禁断の恋、書いてみると面白い。
141004


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