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BSAAオフィスは今日は少し雰囲気が違う。
理由はクリスが今日は出ていて居ないから。
マルコとキートンは先程から二人で一つのパソコンに向かいこそこそして笑っていた。

みんなサボってる訳じゃないけど、少し気が緩んでる。最近、オフィスワークばっかりで皆ストレスが溜まっているのも事実だ。

「あっ!!固まった!」

データ処理に追われていたレイナに悪夢が降りかかった。パソコンのフリーズ。
もともとパソコンに疎い彼女はうんざりした表情で大きな溜め息をついた。

「よし、出来た!」

その傍でピアーズが嬉しそうな声と共ににEnterキーをパチンと鳴らした。どうやら報告書が完成したらしい。

「ピアーズ、ちょっとパソコン貸してー」

項垂れるレイナはUSBメモリーをピアーズにチラリと見せながら言うと、彼は笑った。

「レイナ、フリーズさせ過ぎ。この前もなってただろ」
「私のせいじゃないよ……パソコンが悪いんだよ」

半べそ状態のレイナにピアーズが席を譲り、彼女の頭をポンと撫でる。

「まあ挫けんなよ、今日飯でも行くか?」
「えっ!?やったー!」

目を輝かせてピアーズを見上げる彼女を誰しもが可愛いと思った。
だが、この二人は周知の仲であり、周りの男共にとっては、悔しさが勝る。
ピアーズは飲み物を買ってくると、言い残し出ていった。

(よし!キートン、今だ!)
(イエス、サー!)

目で合図し合うマルコとキートンに誰も構う様子などない。

You got a mail !

ピアーズのパソコンからメールの受信を知らせる声。

「ん?メール?」

レイナは差出人不明のそれを躊躇なく開いた。

「………っ!!」

文字と共に出てきた画像にレイナは絶句してしまう。
それは、素晴らしいプロポーションの女の人が下着姿でこっちに向かって足を広げて………

「キャーっ!○▲×△〜!」
「どうした!?」

叫ぶレイナは画面を指差しながら、しっかり顔を背けて言葉にならない言葉を発していた。
駆け寄ったマルコは画面を見て、うわっと声をあげて見せた。

その時、悲鳴を聞き付けたピアーズが引き返してきた。

「レイナ、何があった!?」
「おいおい、ピアーズ…仕事のパソコンを私用で使うなよな」

残念そうに言うマルコに状況がわからないピアーズが近寄るとレイナは勢いよく立ち上がり、涙目で彼を見た。

「レイナ、大丈夫か…?」
「ピアーズのエッチ!」

パチーン!と強烈な音が部屋中に響いた。
ピアーズに豪快にビンタしたレイナはそのまま飛び出していった。

「俺、何かしたか…?」

もちろん状況のわからないピアーズは呆然と立ち尽くす。

「お前に愛想が尽きたんだろ?」

馬鹿な…。さっきまで仲良くしてて…。
ふと自分のパソコンを見たピアーズは固まった。

「何だよ、これ…」
「ダメだろ?こういうのはちゃんと消しとかねーと」

マルコはマウスを操作すると画像をメールごと消去した。
それを確認したキートンが影からマルコにグッと親指を立てる。

「ちょっと待て、お前らだろ……」

ピアーズの一睨みでマルコは慌てて自分の席へと帰っていった。しかし、咎めるより先にしなければいけない事がある。レイナの誤解を解くことだ。

「くそっ、覚えとけよ」

ピアーズは怒りをなんとか押さえて彼女の後を追った。


* * *


とぼとぼと帰ってきたレイナは一人で、明らかに精神的ダメージを引き摺っていた。
マルコ達に何も言ってこないのを見ると、ピアーズとは入れ違いになったらしく、真相も知らないままのようで、二人はホッとした。

「レイナ、元気出せよ……。何もアイツが浮気した訳じゃねーんだし」
「うん……」

慰めも心に響かないぐらいしょんぼりとしたレイナの耳にまたあの声が聞こえた。

You got a mail !

もはや恐怖の目を向けられたピアーズのパソコンの画面。警戒しながら近付く彼女はまた恐る恐るメールを開けてしまった。

『イエスっ、イエース!!ああーん!』

今度は画像ではなく動画で、豊満な胸を揺らし、高らかに声をあげる女の人の姿。


「見つけた、レイナ!聞いてくれ、誤解なんだ」

そこへ運悪く帰ってきたピアーズは、向けられた彼女の涙を溜め込んだ瞳から送られる冷たい視線に息を飲んだ。
デジャブ…?

動画の音声が卑猥に響き、ピアーズ今度は何があったか直ぐに理解した。

「ちっ、違うんだ!」
「わー!ピアーズのバカーっ!」

途端に顔をくしゃくしゃにして泣き出したレイナには、両手を挙げたピアーズが何を言おうとも言い訳にしか聞こえない。

「俺じゃないんだ!」
「ピアーズは、巨乳が好きなんだー!だからこんなの見てっ!!」
「は?」

画像と動画の女の人と自分を比べたのだろう。

「私なんかじゃ満足できないんでしょ!?」
「いや、普通が一番だよ!俺は!」

泣き喚く彼女にもうあたふたとするしかないピアーズも一緒になって訳のわからないことを言ってしまっている。マルコとキートンは笑いを堪えるのに必死だったが、新たな登場人物によって二人の顔も凍り付いた。

「何を騒いでるんだ?」

予定より早く支部へ帰ってきたクリスが眉間に皺を寄せて立っていたのだ。
動画はマルコの手によって既に消された後で、レイナとピアーズが何か言い争っているようにしか見えない。クリスの視線は明らかに二人に向けられていた。

「隊長…これは……」
「隊長!!隊長も巨乳の方が好みですか!?」
「ちょっ、何聞いて」

怒りと悲しみに溢れたレイナはピアーズの制止を振り切り勢いよくクリスに詰め寄った。

「やっぱりボインの方が良いんでしょう!?」
「ま、まあ……あるにこしたことは」

パチーン!

「やっぱり皆△●×□〜!」

馬鹿正直に答えたクリスはとばっちりを受け、再びレイナは飛び出していった。

隊長を殴った…

誰しもその事に唾を飲むと、クリスは呆然としながらジンジンと痛む頬に手を当てた。

「ピアーズ…俺はなんで殴られたんだろうか?」

地味に、彼女に嫌われたかもしれないということにショックが隠せないクリスに、洗いざらい事情が説明されると、マルコとキートンには沢山の仕事が回されたのだった。



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クリスは天然が良いんです。
ふざけすぎたけど、一応ピアーズ夢(笑)
140625


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