ドラコにとっては名前は良き友人だった。真実はどうあれ、彼女は自分を家で見ず、対等に扱ってくれる。ありがちなそんな事がドラコには新鮮で嬉しかったのである。だから普通の“友人”らしく、休日には遊びに行ってみたかったし、クディッチ観戦なんてものもしてみたかった。
そんなたわいもないことを考えて、ドラコはお目当ての“彼女”の元に向かっていた。今日は1日図書館に篭ると言っていた名前に、それならば宿題を共にやろうと持ちかけたのはドラコの方である。

名前は座学の成績は飛び抜けている。皆が苦手意識を持つ(これは教授のせいかもしれないが)魔法薬学だって器用にこなす…どころか最も興味のある授業だと言っていた。しかしそれに反比例するように実技の授業では成果を出せていなかった。飛行訓練では一度目の授業以降飛ぼうとする意思さえ見受けられないし、どの授業でもさぼるわ態度は悪いわ杖は持って来ないわやる気はないわの劣等生である。
どうやら興味のあることにしかその才能は働かないらしい。周りは座学ばかりできても実技ができなければなんの意味もないとはやし立てるが、本人は全く気にしてはいないらしくどこ吹く風で今日も居眠りをしていた。

しかしドラコは名前が才能がないわけではない事を知っていた。たとえば魔法薬学の授業で爆発が起こったとき、阿鼻叫喚となった生徒たちの中で近くにいたはずの名前は全くの無傷で調合を進めていた。本人は運がよかった等のたまうが、きっとあれは何か防御魔法をかけていたに違いない。たとえば廊下を歩くとき、ふと十字を着るような仕草をした後はゴーストたちが名前の存在を無視するようになった。教科書を調べてもそんな魔法は書いてはおらず、もしかしたら何か上級生の使う魔法なのかもしれない。
友達なのだから、秘密など作って欲しくないと思うのは子供っぽい事なのだろうか。彼女はいつだって、どこかミステリアスだった。

「あれ、ドラコ?」
「名前?図書館に行くと言っていなかったか」

廊下を曲がったところで大荷物を抱えた名前と出会い、ドラコは足を止めた。名前が両手に持っている物はドラコにはあまり馴染みのない物ばかりで、見た限りでは何に使われるものなのかは良く分からなかった。

「なんだその大荷物は」
「頼んでいたものが届いたんだよ」
「またマグルの道具か?」
「そんな嫌そうな顔をしなくても」

興味はあるくせに、と笑ったように言われ、ドラコは言葉をつまらせた。確かに名前のする事は不思議なことが多い。部屋で木の実といったか――見たこともない植物を育てていたり、わざわざキッチンで何か保存食のようなものを作っていたりと、ドラコが今まで生きてきた中では経験したことのないものばかりだった。

「名前は純血のくせに本当に物好きだな」
「……あー、うん、まぁ、便利なものは取り入れるべきだとは思うよ。」

どうにも途切れが悪く話す名前にも、少しは後ろめたく感じるところがあるらしい。思えばドラコは名前の家のことを何一つ知らなかった。やはり家族には厳しく言われるのだろうか。

「仕方が無いから僕が部屋まで運んでやる」
「どうして素直に言えないかなぁ」

もっと休日を有意義に過ごせないのかだとか、そんなことでは家の名にどうだとか、言ったところで、どうせ耳を貸さないのだ。それならば自分くらいはほんの少しだけ、この変な趣味を寛容してやってもいいとドラコは思った。決して自分の好奇心なんかの為ではなく、あくでもこの変わった友人の為なのである。




「ねえリオルやばくない?虫よけスプレーってゴーストにもきくっぽいんだけど。先頭リザにしてたらレベル差ぱないわwwwwww」
「ますたーわるいかお!」





140815
ある日の休日。
ドラコも好奇心旺盛なお年頃

※虫よけスプレー
効果:100歩進む間、先頭のポケモンよりレベルの低い野生ポケモンは出てこなくなる。

リクエスト:主人公の休日、過ごし方(チシャ様)
タイトルは314様より


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