「ゲーンガ−」 「・・・・・・!!!」 「・・・・・・・・・。うん、なんかごめん」 新しく来たゲンガーは何故か私に恐怖を覚えているらしく、始終びくびくとしていた。名前を呼んだだけで怯えられる始末である。何故だ。 今も部屋の隅で小さくなって、こちらを伺いながらぷるぷると震えている。なにもとって食ったりなんてしない。のに。何度も何度も根気強く、優しく話しかけているにもかかわらず、非常に怖がられれている。解せぬ。 「きーとるんなら返事くらいしたらどうやねん」 「ゲンッ!?」 かわいそうなくらいに背中が揺れた。しかしこればかりは仕方がない。私が悪いのならばいくらでも改善する努力はするが、まず原因が分からない。 「こっちおいでー、ほら、晩ご飯食わへんの?お腹へってるんやろ?食い逃してお腹減って寝れへんくなっても知らんで!」 「・・・・・・!!!!」 ぶんぶんと首をふって、おそるおそる見上げてきたゲンガーにため息を一つ。そしたらまた大きく肩を揺らして怯えた。 いっそおもしろいくらいに反応する。しかしお腹はへったのか、そーっと晩ご飯に手を伸ばす。 「なーゲンガー」 「!!!!」 「あ、こら、のど詰まらすやつがおるか!ほら、水飲んで!かみ切れないんやったらぺっしな、ぺっ!」 そういってゲンガーの口の前に手を差し出しても、大きな目に涙をためて、これまた大きな、短い手で口を押さえて一所懸命飲み込もうとする。 もぐもぐごっくん。 ゲンガーの喉(かどうかはこのまんまるな体では分からないが)が動くのを見て、ゆっくり、驚かせないように、そーっと。自分に言い聞かせて話しかける。 この子は今日来たばっかりだ。きっと不安な事も多いに違いない。それもカントーから、そらをとぶなんて使えない彼にとっては果てしなく遠い場所からきたのだ。そりゃあ怖いに違いない。なにもかも分からない、知らない、景色も文化も違う− 「あ」 「!?」 何となく分かったかもしれない。このまるで言葉が通じない人と(いやポケモンは人間の言葉を話せないが)話している感覚。こわごわと、上目遣いで見上げてくるゲンガーにキュンとする。何この子ほんまにかわいい。いや私は断じてSではないが。しかしほんとにゴーストタイプなんだろうか。 話がそれた。 「ゲンガーもしかしてうちの、じゃない、私の話し方が怖かったの?」 「!!!!」 関西弁を標準語になおして、ゲンガーに話しかけてみれば目に見えてぱあああ、と表情が明るくなった。 これはもしかしなくても。 「ごめんゲンガー、怒ってたわけじゃないんだよ・・・」 「?」 もぐもぐと、安心したようにご飯をほおばり始めたゲンガーに、がっくりと膝をついた。 ゲンガーと (カルチャーショック) 130203 関西弁は関東とか他の地域の人からきいたら怒ってるみたいにきこえる、とか、声がでかい分こわい、とか(関西でなくジョウトですが)。しかし私はゲンガーに夢をみすぎている。気がしなくもない。 ×
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