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ため息しか出ない。
私がこの爺さんにだきしめられてるこの状況も、それにキレたレントラーがスネイプに八つ当たりしてる阿鼻叫喚図も。ダークライは何だが拗ねているし、ボールの中のポケモン達はがたがたと暴れている。すぐにでも出てきそうな勢いのリオルをリザードンが押さえているのが見えた。ありがとうリザードン、唯一の常識人。ああ今すぐその逞しい胸に飛び込みたい。


「ため息をつくと幸せが逃げるんじゃよ」

「…そうですかご忠告感謝します」


このうっかりさん☆とでも言いたげなダンブルドアに適当な相槌を返しつつ、またため息。ため息をつくから幸せが逃げるんじゃない。幸せが逃げたからため息をつくんだよちくしょうめ。



しかし私がホグワーツとやらに入学するとしてだ。保護者うんぬんはダンブルドアがなんとかしてくれそうな雰囲気ではある。学費の方も、まぁその辺は私の演技力と頭脳にかかっている。


「ダンブルドアさんは私には力を制御する勉強が必要だと?」

「そうじゃ。お主の力は魔法とは少し違うようじゃがの。ご両親はマグルじゃったのか?」


そう言われ、私はさも困ったと云う風にうつむいた。
ダンブルドアは悪いことをきいたかの、とすまなそうに言って私の頭に手をおいた。しかし私は何も言ってない。俯いただけ。嘘はついてません。
しかし横から見てくるスネイプの視線が非常に痛い。そりゃそうだ。先程スネイプを足蹴にしつつダンブルドアと話していた私とは態度が180度違うと言っても過言ではない。さぞかし気持ちの悪い事だろうと思われる。ぶっちゃけ私も気持ち悪い。ついでにいえばこれくらいでダンブルドアを欺けるとは思ってはいない。
ダンブルドアの中では私はすでに彼に心を許した女の子、であるらしい。だが私がそうであるように、彼もまた本気でそう思っているかどうかは疑わしい。少なくとも同情心だけではないのは確かなのだ。まぁ今はそんな事はどうでもいいから取り敢えず衣食住の確保が先決。めんどくさいことは取り敢えずご飯たべてから考えるに限る。


「…ダンブルドアさん達は魔法使いなんですよね。私はここがどこかわからないと言ったのは覚えておられますか?その事ですが、私がここに連れて来られたあれは、魔法としか言いようの無いものでした。」


取り敢えず、この話題から話を逸らすように話題を変えてみた。信憑性も増すしボロも出ないしこれぞ一石二鳥。


「…それはどんなものだったか説明はできるかの?」


逆に面倒臭いことになった。あれ実際多分魔法じゃないしなぁと黙っていれば、意外な所から助け船が。


「校長、この子も疲れているでしょうし、取り敢えず一旦戻りませんか。帰って落ち着いてからゆっくりと話を聞けばいい」

「…そうじゃの。ミスアウリス、わしらと一緒に来たらいい。帰る方法もこれからの事も、暖かい紅茶でも飲みながら一緒に考えよう」

「……」


ダンブルドアはまだ分かるが、私にはスネイプの態度と行動がどうしても納得できなかった。いくら何でも警戒を解くのが早すぎる。真っ先にダンブルドアを止めると思っていたのにまさか招待されてしまうとは。
先程私がこいつらに勝てたのは不意をつけたからだ。二度目は分からない。
そもそも魔法学校?魔法が実際あるのは分かったが本当にこいつはその校長か?疑いだしたらきりがないのは分かってはいるのだが、一度考えだしたらその連鎖はとまらなくなる。


「カルム」

「ダーク?」


小さな声でそっと、ダークライが私を名で呼んだ。ぐるぐると動き続けていた思考が一気に活動を停止する。


「考えすぎるな。流れに身を任せるのも手の一つ、だ」


ダークライの手がそっと私の肩に触れた。そしてそのまま彼は私の影の中に溶ける様にして姿を消した。完璧だ。さぞかし彼らの目にはダークライが私の能力の一つに見えただろう。影の中に何かを飼うみたいな。


「…儂等を警戒するのも無理はない。」

「はぁ(なに当たり前な事言ってんのこの人)」

「君を守ろうとしている彼らが儂等を嫌うのも仕方がない。彼等は君が傷付く姿などもう二度と見たくはなかっただろうに」


どちらかといえば警戒されるような行動をしたのはわたしのような。でもよく考えたらあれって正当防衛なんじゃ?しかも何だが話がずれてきているような。
真剣な顔で話を聞いているスネイプも、どうやら私が踵で頭を踏みつけた事も忘れてくれる…らしい。おやラッキー



***
最後の最後で色々台無し





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