▼あいにく品のない銃と女は趣味じゃない



海賊といっても良い海賊と悪い海賊がいる。いや海軍から見たら海賊に良いも悪いもないのだが、俺が狩っていい海賊か、そうでないか、俺にとってはそこが大事だ。簡単に言えば、「ワンピース」にでていたキャラは狩らない。そう、決めている。だって、俺がどうこうしていい奴らじゃあないし、話の流れってやつもある。そこは俺がこの世界で生きると決めた後でも遠慮しなきゃいけない部分だと思っている。いやまぁどう考えても負けるっていうのもあるが。無理無理。

それにだ、考えてもみろ、例えば四皇だ。奴らがいなくなればこの海は間違いなく今より荒れるし、抑止力なくなった無法地帯となる。そんなことになったら海軍の仕事は必然的に増える。確実に増える。だから狩るべき海賊とそうでない海賊がいるのだ。俺の仕事量と定時帰社のためにもそう力説したいが、俺の上司は奴である。そんなこと言った暁には首が飛ぶ。物理的な意味で。
というかまず王下七武海とかいる時点で矛盾してることに誰か気付こうぜ…

そんな俺の元にいるせいか俺の部下達はいい感じに俺の思考に染まりつつある。あ、さすがに定時帰社の方じゃなくて狩るべき海賊を見極めろって点で。まずは外堀から埋めることが大切だ。要はちゃんと仕事さえこなしてりゃいいのだ。


「てことでちょっと挨拶してくるからお前らも適当に休んどけ。あ、大将から呼び出しがあったら俺は絶賛海賊狩り中ってことで」


上物の酒瓶を振りながらそう言えば、勝手知ったる俺の部下ちゃん達はいつもと変わらぬ態度で送り出してくれた。持つべきものは良い部下である。最近入った新入りちゃんが信じられない物を見るような顔をしてこちらを見ていたがそこはあれだ、先輩部下たちが優しく丁寧にご指導してくれるだろう。


「相変わらず良く調教された部下だねい」
「よくできた部下だと言ってくれないかな」


俺の横で気だるげに突っ立っているこいつの事もみーんな知っててああなんだから。そう笑い、俺はかの不死鳥様の燃える背中にお邪魔した。タク代わりに使っちゃってほんとすみません。







「おやじさん、ご無沙汰です」


無造作に高いであろう酒を近くにいたクルーに放った名前は、そういって崩さぬ笑顔でオヤジの前に立った。その背には隠されることもなく正義の文字がある。何人かのクルーが殺気立ったのに気づいているだろうに、そんなそぶりも見せないこの男はまさしく海賊の敵、冷酷なまでの海賊狩りで有名な海軍中将名字・名前であった。

少し前に、海軍との戦闘でヘマをして海に落ちたマルコを名前がモビーにリリースしにきたのがこの妙な関係の始まりだった。落ちたマルコを見るや否や何かよく分からないことを口走った名前は、すぐに己の船とともに戦闘地域を離脱した。幸い偵察に出ていただけだったマルコは数日で近くにいたモビーへと戻ることができたが、誰が海軍の船にかの不死鳥のマルコが乗っていたなど思うだろうか。
どれだけ問い詰めてもシラを切る名前の考えていることなんてわかりゃしないが、狩る側の人間特有の目つきは他の隊長格の連中も気に入っている者が多い。血の気の多い輩には丁度良いのだろう。


「オメェは相変わらずだな」
「部下が優秀ですから」
「フン、小僧が生意気な口をきかやがる」


お先に失礼、と持ってきた酒に口をつけて見せた名前は、自分の立場をきちんと理解している。だからこうして白ひげも、マルコも、名前を船に乗せるのだ。
宴だ!と笑った親父に、久々の歓迎者に船が揺れた。







宴だー!とどんちゃん騒ぎが始まった白ひげ海賊団を見て、気のいい奴らだなぁとしみじみとした。正義を背負ったままの俺をこの船に乗せて、挙げ句の果てに共に飲んでいるのだ。いやあれだ、たぶん俺が妙な動きをしてもいつでも首ちょんぱできるぜアピールなのかもしれない。まぁ実際それくらいはへのかっぱなんだろうけど。

俺の部下ちゃんたちもきっと今頃船で好きに飲んでいる頃だろう。たまには上司が遊ばないと、部下は息抜きもできないしな。上司が出張でいない日なんて定時退社キメてた俺はその気持ちがとてもよくわかる。


「海軍中将ともありゃ、女なんてよりどりみどりなんだろォ?」
「は?なんだって?」
「所帯ももたねえ、浮いた噂も聞かねえ海軍中将サマの下のお世話は誰がしてるのかって話だよ」


なんの話だ。突然絡んできたリーゼントに目を白黒させていれば、周りもやんややんやと盛り上がる。俺が一人で静かに飲んでいた間に周りは女自慢で盛り上がっていたらしい。このリア充どもめ…俺みたいなフツメンに自主的に女を買える度胸があると思っているのか…爆発したらいいのに…
さすがに上官との付き合いもあるし、そういった店にはたまに行くから童貞ではないが、俺の好みはあんな派手なお姉様方ではなくもっと可愛い系の普通の女の子だ。ギャルこわい。しかしそんなことこのDQNだらけの船じゃ確実に分かってもらえない。海賊なんてDQNばっかじゃねーか…DQNはボインなお姉さまと付き合っとけ。それに俺は彼女できねーんじゃねーのあえて作ってないの!負け惜しみ?知ってる!


「あいにく品のない銃と女は趣味じゃない」


とりあえず深く突っ込まれる前にそろそろおいとましますね。
女泣かせな奴だとか、そろそろいい女紹介してやったほうがいいんじゃないかとか、きっと俺の反応を面白がったのであろう親父殿が後で余計な事を家族に吹聴していたことなんて、俺は知る由もなかったのである。ほんとDQN怖い。




150118
18万打リクエスト:海賊から見た夢主(緋月様)
白ひげ海賊団友情出演でした笑




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