▼どこまで戦えるかは俺だけが知ってればいい 俺の部屋には壁に海賊の手配書が貼ってある。それもなんかいかにも悪そうな顔をしたたっかい懸賞金の奴らのばっかり。遠征とかで俺がそいつらを倒すとそこには赤で大きくバツがかかれ、ファイリングされてゆく。 ……俺の部下の手によって。 ノルマってことですよねわかります。いや、俺も一応中将ですし??やらなきゃいけないのはわかってるけどね???でも俺もほかにもいろいろ仕事もあるわけですよ。明らかにプレッシャーあたえてくる手配書なんて部屋に貼らなくてもね???なんか呪われそうだし。 しかもなんでこんな明らかガラ悪そうなやつらのばっか。もしかして暗に死ねって言われてるのかな。しかしほんと。 「暇ナーーーーーーー」 いややることはいっぱいあるんだけど。暇じゃないけど暇なときってあるよね!お行儀悪く足を机の上にどっかとのせて仕事を放棄する。ほんとこの部屋心が休まらない。 手元にあったペンをくるくる回し、ついでに誰もいないのをいいことにダーツのごとく壁に向かって投げてみる。こいつらのせいでほんと毎回毎回……とふつふつと煮えくりだった怒りもついでに乗せれば見事に手配書ど真ん中に命中するペン。ちょっとだけすかっとした。 「入るぞ」 「あ」 すんませんサボってたわけじゃないんですーー!バッドタイミングすぎる瞬間に入ってきたセンゴクさんに心の中でスライディング土下座である。しかし手配書ペンダーツをした形跡はしっかりみられてしまったので今更言い訳をしても怒られるだけだろうから黙っておく。沈黙は金なり。頼むからこの微妙な沈黙を誰かどうにかして。 「ずいぶんと」 「センゴクさん、ご要件は」 そろそろホトケだけに仏の顔ゲージ(笑)もなくなりそうなので品行方正にいこうとおもいます。話を遮って申し訳ないがここは(自称)礼儀正しい俺の噂の出番である。 「いや、たいしたことでは「中将おおおおお!」 ………。 ………………。 /(^o^)\ いやだからお前らほんと空気嫁ーー!!普段は頼りになる俺の部下ちゃんはこういう時に限って空気読まない!!ほんと!!おこだよおこ!扉を蹴破る勢いで入ってきた部下に俺の魂の叫びなんて届くはずもなさそうなので、とりあえず全力でペン(二本目)をなげつける。俺は今…猛烈に怒っている…! 「俺の部屋に入るときはまずどうしろといった?」 いっつもノックくらいしろって俺言ったよね!誰が来てるかわかんないって俺言ったよね!聞いてない?前出ろ前だァとかいうまもなく、扉の前でやつは見事に床に方膝ついて跪いてみせた。わーい騎士みたーい。イエス・ユア・ハイネスってか。俺の語尾にはもれなく草生えそう。誰か芝刈機ー 「躾ができていなくて申し訳ない」 「いや、」 ほらもーセンゴクさんドン引き!いまので仏ゲージ大分減った!でもセンゴクさんもノックしなかったし今回はチャラとか……言える度胸も立場もありませんでしたねすみません!悲しきかな縦社会!確実に給料減らされたわこれ。いやこっちの世界来てから給料の使い道もあんまりないんですけど!今俺プロデューサーさんでもないしね! ◇ センゴクもまた、他の将校と同じ様に名前という男のことをあまり好いてはいなかった。 こだわりが強過ぎる男というのは何かしら抱えていることが多い。それはその人間に良い影響を与える場合と、そうではない場合がある。彼はセンゴクから見て後者であった。ある日ふと思いついたように海軍に志願してきた様に見えたと彼の最初の上司であった男は語っている。それこそ子供の思いつきの様に、いつ飽きるかもわからぬまま。そこからなに食わぬ顔でのし上がってきたこの男に憧憬を抱くのは下の者だけであり、ある程度の力のあるものであれば警戒する種にしかならない。 今だってセンゴクが入ってきたにもかかわらずなんの感情も見せぬ瞳でペンを握る目の前の男は、先ほど感じた殺気は欠片も見せてはいなかった。視線の先には手配書の真ん中に深々と突き刺さるペン。彼が投げたそれは見事に手配書の中で笑う海賊の眉間を狙っていた。 部屋中に貼られた手配書は、どれも極悪と恐れられる者ばかりだった。この男の過去に何があったかなどはセンゴクは知りもしやしなかったが、彼の背負う正義とその殺気に、今の大将達の若い頃とはまた違った末恐ろしさを感じさせた。 「ずいぶんと」 荒れておる、そう言いかけた言葉は名前の言葉によって遮られた。上官に対する態度ではないが、彼の普段の態度からすれば珍しい方だった。上官を全く敬わない者もいる中で、彼は礼儀正しく規律に厳しい事でも有名であった。それ故に一層その気味の悪さに拍車が掛かっているともいえたが、それくらいは理解しての行動なのであればセンゴクは何も言うべきことはないと考えたいた。この海軍において強い者は貴重である。それが将来どう転ぼうとも。 センゴクが口を開きかけたところでまた大きな音を立てて扉が開く。入ってきた名前の部下らしき男は、何か報告でもあるのか真っ赤な頬をし息を切らしていた。それならば大した用があるわけでもない自分は邪魔であろうと思ったセンゴクの横を、また鋭い音を立てて何かが通り過ぎる。 見れば部下の横には名前が投げたのであろうペンが刺さっており、先程以上の殺気が膨れ上がっていた。 「俺の部屋に入るときはまずどうしろといった?」 ぞっとするぼに冷たい声に、部下の男ははっとした顔をした。しかしすぐにその膝をつき、自らの無礼を詫びる。 「……よほど手懐けているようだ」 「躾ができていなくて申し訳ない」 「いや、」 皮肉を込めて発した言葉には、当たり前のように言葉を返される。この男の隊の特殊性は前々からわかってはいたが、ここまで絶対的なものであっただろうか。 跪いた部下は未だ微塵も動かず、自らの上官の許しを待っていた。 「貴様はどこまで戦うつもりだ?」 「貴様とはまた酷い言われ様ですね。……どこまで戦えるかは俺だけが知ってればいい」 挑発的に笑った名前の顔を、センゴクは苦々しげに見返した。 140705 18万打リクエスト:センゴク視点(匿名様) index ×
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