▼初めから、逃げ場なんてなかった




※輪廻転生記憶あり夢主とチャリア組
※男主


何度生まれ変わったか分からない。一番最初の記憶は確か、戦国の世だった。貧しい村に生まれた。寒さの厳しい土地だったように思う。厳しい年貢の取り立てに、度重なる戦。徴兵され、何度かの戦は生き延びた。それでも武将でも何でもない一介の弓兵は、誰に知られることもなく、死んだ。妻子は戦で死に、村に残した老いた母だけが心残りだった。

それか何度か生をうけた。その度に、その生は天寿を全うすることはなかった。切り殺されたことも、裏切られ殺されたことも、見せしめのために処刑されたこともあった。捕虜として拷問の末死んだことも、敵艦に特攻をかけたこともあった。

今思えばどれも碌な死に方をしていない。だから、この平和な世で、なんとしてでも生きたいと思ったのだ。この平成の時代でも、もちろん事故だ誘拐だ強盗だと何かと物騒ではある。しかし今までの経験をフルに生かし、数々のフラグをへし折ってきた。いつ何時も油断は許されない。俺は生きたいのだ。(思えば戦死した記憶が多いと言うことはある意味修羅場慣れしていてよかったのかもしれない。嫌な慣れだが)

もちろん自分自身の努力を怠ったつもりはない。武道を習い、徹底した危険回避の術を学んだ。兵法書にまで手を出した。いつ戦争が始まり徴兵されても良いように学術の方もぬかりない。死亡確率が高いのはいつだって、下っ端の兵士だ。最終学歴の高い者は幹部、将校になれる。医者になれば兵卒としての徴兵はない。
現代において物騒な思考だと自分でも思う。だが今までの人生が戦死だかりだったのだからある意味仕方ないのかもしれない。戦はもうこりごりなのだ。俺が生き残ることが最優先事項だ。

高校にあがり、弓道部に所属したのは単なる偶然に過ぎない。最初の生を思い出し、懐かしく感じただけだ。銃の使えないこの国で、飛び道具に魅力を感じただけかもしれない。もともと素質があったのか記憶のせいか、俺の弓道のうではめきめきと上達した。たぶん記憶の影響も大きいのだろうと俺は推測している(というより生死をかけた戦場にいれば嫌でも腕はあがる)
部でのエースとなり、大会で何度も優勝した。俺の矢は外れる事はない。
全ての試合、というより矢にこちとら生死をかけて死にものぐるいでやっているのだから当然と言えば当然の結果である。

だから。
こいつらに会ったとき、何か命の危機のようなものを感じたのだ。
目の前の相手に対し俺の脳内で警戒アラームが猛烈に鳴っている。
明確な根拠はないが、嫌な感じがした。どの世にも、圧倒的なカリスマ性を持つ者は存在する。そいつらは下っ端がいくら努力しようとも破れなかった壁を易々と突破し、高見へと上り詰める。そしてそいつが歩く道の後ろには屍が並ぶのだ。
そいつらと、目の前の男は同じ臭いがした。





俺がそいつに興味を持ったのは単なる偶然だ。真ちゃんは練習の後、お汁粉を買う。その自販機のある場所の近くには弓道部の練習場がある。俺たちが居残って練習を終え、帰路につく頃は生徒のほとんどが帰宅している。だがいつも、弓道部だけは練習場の明かりがついていた。
それだけだ。気になって人にきいてみれば、その理由は弓道部のエース様。そいつの弓も真ちゃんと同じで決して外れることはないとかなんとか。うちのエース様みてぇ、と笑ったことを覚えている。
キセキの世代緑間真太郎の入学により陰がうすれているが、そいつも大会では優勝常連のエースだった。惜しむとすれば緑間と学年がかぶってしまった事だろうか。しかし本人そんな評価などどこ吹く風で練習に打ち込んでいた。
だから、自販機の前で練習帰りであろうそいつと出くわしたとき、何となく声をかけたのだ。

「あんたが弓道部のエース様?」
「知り合いか?高尾」
「うんにゃ?でも真ちゃんと同じで絶対的を外さねぇ1年エース様だってさ」

そう言って振り向けば、真ちゃんの姿を見つめ固まったままの彼と目が合った。


***
130122
中編にするつもりが続かなかっt(ry
主人公はなんやかんや言ってますが要するにチキンです(台無し)


タイトルは累卵様から頂きました





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