▼話をきけよ



「ハンター試験、受けるの?」

「うん、どうせ次の仕事にも必要だし受けるつもりだよ。」

「あーはいはい、そう云う事にしとくわ」

素直に弟が心配で心配でたまらないと言えば良いのに。
何食わぬ顔でさらりと言うイルミにそんな事は言うつもりはないが、それよりも問題はここからだ。

「ねぇ、」

「私は受けるつもりはないから。まぁ一次試験の会場くらいは調べてあげるけど」

えー・・と首を傾げて見てくるイルミにうっと詰まりながらも言い張る。
そんなイルミが可愛いと思ってしまう私の思考も最近やばめな気がする。

「だめ?」

「だめです「誰?」・・は?」

何を言い出すんだこの男は。本気で首を傾げた名前に、イルミはだから、と繰り返した。

「どうせ仕事が、とか言うんでしょ?誰?依頼者。」

「殺す気満々ですよねイルミさん。駄目だから。今回はクロロ達だし。」

名前を出しても殺される様な奴らでもないし、イルミが名前の家族を殺しに行くとは思わないので依頼者のプライバシーなど無視して(そもそもあいつらにプライバシーなど存在しない)教えてやる。
案の定、イルミはむぅ、と不満気な顔をして押し黙った。

「何でそんな依頼受けるの」

「今回のは大がかりな仕事らしいよー」

イルミの言葉をわざと無視し話を進める。
全体的にクロロ達が持ってくる依頼は果てしなく面倒なものが多いのだが、調べがいがある上名前のプライドや情報屋魂を刺激する様な物ばかりだった。

イルミがぷぃと拗ねた様に横を向いた。

「まぁいいや」

「そうそう素直に諦めなさい」

「二人分申し込んでおくから出発までに仕事終わらしといてね。」

「・・は?」

先ほど話を無視された仕返しなのか何なのか、人の話を華麗にスルーして話を進めるイルミに唖然とする。(理不尽だ)
そうなると自然にハンター試験の会場を探すのも自分の役目になる。(いやさっき確かに調べてやるとは言ったけれども)
だって、とイルミが口を開いた。

「俺はあの変装して行くから、キルは間違っても近くには来ないだろうし。名前に変装して近くで見てもらうしかないじゃん。」

イルミは仕方がないよ、とでも言いたげだ。だがしかし断じてそんなことはない。はずだ。

「いや何か私が悪いみたいに聞こえるけどもイルがあの変装やめたらいいと思う」

「でもあれぐらいの変装じゃないとキル感付くし。」

「なら陰からこっそり見守っとけばいいんじゃね?」

「・・じゃ、そう云う事だから。」

「オイコラ待てや」

片手をあげて去っていくイルミには何を言っても無駄だと分かってはいるのだが。

「DVだー私の自由を束縛するー」

「今更俺にそんなまっとうな事言うの。ていうかそれなら名前が普段俺にしている事は何て言うの?」

「行ってらっさい!」

「うん、行ってきます」

ちゅ、と額にキスをして出ていったイルミを笑顔で見送る。
べつに暗器投げても全部避けるかふせぐかできているのだから別にいいじゃないか。背後に突然無言で現れるイルミが悪いのだ。(心臓に悪すぎる)



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