「まだ残ってたの?」
大石くんが驚いた口調で言った。
放課後の教室には私ひとりで、さっきまで茜色だった窓の外ももう真っ暗だった。
「うん、これ、もう少しで仕上がるところだから。皆には先に帰ってもらったの」
学祭で使う予定の看板を見せる。
「働き者だね」
苦笑する大石くんこそ、こんな時間まで準備に走り回ってたくせに。
「そうだ、俺もチケットの準備やっちゃおう。ここでやらせてもらってもいいかな?」
「…いいけど」
「よかった。じゃあ終わったら駅まで送るよ」
…やさしいなあ。
「ありがとう」
って笑ったら大石くんはチケットの束をどさーっと落とした。
そんな失敗するなんて意外で、でも今までより彼を知った気がしてうれしくなった。