入れ替わりました。しかも縮んじゃったよ?どうしてくれんですかこれ。
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 バタバタ、という早朝に似つかわしくない擬音が響いた。
 広間に向かってそれはやってきているようで、だんだん音が大きくなっていく。
 ガラッ、と威勢良く開いた襖を目の前にいた9人は驚いたように見つめた。

「―――…いた…!!」
「見つけましたよ…山南さん!!」

 全員の目線が幹部の最端で味噌汁をすする山南に向けられる。
 しかし、全員が完璧に山南を凝視することはできなかった。
 ―――それ以上に気になる"モノ"が目の前に現れたのだから、それも仕方のない反応なのだが。

「―…子供?」

 沖田の発したその一言で、その場の空気が完全に凍りついた。
 一人、山南だけが和やかな笑みを浮かべながら茶をすする。今度は茶か、などと突っ込む勇気のある者はいなかった。


「…山南さん…。…これは一体どういうことですか!?」
「そーだよ山(やま)さん! しかも子供になるだけならともかく、なんで千鶴ちゃんと入れ替わってんのさっ!!」
「…この口調…まさか、とは思うが、」

 斎藤が顔を引きつらせながら千鶴を見つめる。
 ―――"あれ"でないことを願いたい。

「兄様!! どうにかしてくださいよもうっ!!」

 千鶴の姿(子供姿だが)で斎藤に駆け寄る人物はそんなことを口にした。
 …と、いうことは…やはり。

「千鶴の中に…蒼架ってところか…?」
「そーですっ!! 山さんの持ってきたお菓子食べたらこんなになってしまって…!!」
「なぁに、しばらくすれば戻ることです。気にする必要は無いですよ」

 サラリと爆弾発言を投下するのが山南だ。…空気がぴしりと凍る。

「兄様ぁ―――っっ!!! 本ッッ当に斬っていいですか!!? いや、斬るだけじゃ足りないです。…毒盛っていたぶってから焼き殺していいですか!?」

 ブフォ、と吹き出しかけるくらいの勢いで鳩尾に飛び込まれ、斎藤は前のめった。
 しかし、ここは斎藤。体制を崩すことなく子供千鶴を抱きとめる。
 …普通なら、此処は姉弟云々かんぬんで収まるのだが、どうやら今日は違うらしい。…いや、今の状況を考えればその通りだろう。




 千鶴in蒼架で、蒼架in千鶴。
 イコール、千鶴の容姿をした蒼架。
 それに抱きつかれている斎藤。
 千鶴を好きな幹部たち。






 ―――つまり言ってしまえば 地 獄 絵 図d(´∀`*)テヘ☆





「…しかも子供姿っ…!!」
「…斎藤、覚悟は出来てるんだろうな…?」
「平助…土方さん、これは外見は千鶴ですが中身は蒼架で、『外見"は"千鶴だろ』
「そうだよ一君。土方さんの言う通り。…千鶴ちゃん…いや、蒼架ちゃん、こっちおいで」
「あっ、総司抜けがけ禁止ーっ!!」
「蒼架、こっちおいで。左之兄ちゃんが遊んでやる」
「いやいや蒼架ちゃん、僕の方に来るよね? ね?」

『…とっしー、へーすけ、そーにぃ、さのにぃ…大人気無っ。…近寄んないでくれますか?』


 ぐさり



 …中身は蒼架だってことを忘れてました。by幹部
 そうだったそうだった。蒼架は兄以外にはかなりきびしーい目線を向けるんだった。

 しかも千鶴の姿で拒否られるとは。
 ▼蒼架は幹部たちにダメージを1000000与えた!



「…そっ…蒼架ちゃん…!! み、皆さん大丈夫ですか…?」
「…お…おぅ…千鶴はやっぱ優しいな…」
「千鶴ちゃん…蒼架ちゃんの姿してるけど…千鶴ちゃん補給…」
「きゃっ!? 沖田さん、抱きつかないでくださいぃーっ!! って平助君!? 口から何か出てる…って魂!!? だめ、まだ平助君は三途の川渡っちゃダメだよっ!!」
「ああ……なんか花畑が見える……千鶴、俺はもう思い残すことはない……」
「平助君っっ!! なに変なこと言ってるのっ! あわわわ、魂がっ!!」

 …どうやら千鶴姿の蒼架の言動はかなりのダメージを与えたらしい。


「蒼架ちゃんっ!! ここは優しい言葉かけてあげたり…」
「やだ」
「蒼架ちゃん…!! 今度一緒に巡察に行くときに蒼架ちゃんの好きなことしていいから、お願い聞いて…?」
「…なんでも? ほんと?」
「もちろん!!」
「やる」


 なんて現金な。


「―――土方さん、平助君、沖田さん、原田さん」
「…ぅ、…ち、づる…?」
「千鶴ちゃん…?」
「大丈夫ですか? すみません、蒼架ちゃんが勝手な事を…」
「いや、…大丈夫だから気にすんな」
「…私は、大人気無い皆さんも大好きですよ」


 ―――ここに来た当初は見ることなんて出来なかったものですから。
 そう千鶴が続ける。…がば、と倒れ伏していた4人が起き上がった。


「本当なの? …千鶴ちゃん」
「はい。…だから、蒼架ちゃんの言ったことなんて気にしなくて大丈夫だったんですよ」
「…そっか、良かった…」




(…なんかいい話見たいな流れで終わってますけど…)
(いいのではないか? あの4人がそれで救われたのなら)
(そ、それはそうですけど…)



((蒼架/蒼架ちゃんは演技が得意なのだな/得意なんですね…))





 蒼架の秘めざる力、ここに開花する。







*(20130131:改稿) 
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