【運命が無いなんて言わせへんで。ウチらが出会ったのはきっと運命なんやから】/胡桃様より(頂き物)








『――誰だ、お前?』



病室に居るのはウチと貴方と貴方の親友だけ。
目覚めた時、嬉しかった。ただ、それだけで嬉しかったのにその重い言葉が頭から抜けない。自分が誰なのかも分からないと言われたときは涙がこぼれそうになった。
だが、涙は必死に堪えた。…だって、涙は誰かがこの世に居なくなったときだけにしよう。と心に決めたから。
最愛の父と母を亡くし、あのときの悲しさや孤独さを忘れたこと等一度も無い。毎晩泣くウチにそっと頭を撫でる彼の手がとても暖かくて、しだいに心が和らいだ。
それからだろう。貴方を見つめ、スキになっていったのは。



 
 今日もいつものように他愛無い喧嘩をしながら過ごす日だと思っていた。
互いに会うことが少ないため、こうして話す時間が心地よかった。『バカ』と言われれば『アンタがバカやねん!』なんて笑いながら返すキャッチボールが楽しかった。
スーパーに2人で行けば、買い物袋を手に取ってじゃんけんの勝負を挑む。それはもちろんウチからの挑戦状。そして、負けるのもいつもウチ。
しぶしぶ重い荷物を両手で持っていると、『貸せ』と右側のそれを奪い、空いた右側がほんのり暖かくなる。その小さな幸せが溜まらなかった。
だけど、次の瞬間。目の前が灰色に映った。辺りは灰色なのに右手だけが紅色で染まっている。……血の気が引く思いをして駆け出した。



『なつめぇぇっ!!』



本当に些細な一瞬の出来事だった。
高速度を出していた車が誤って操作を間違え、ウチらの方めがけて突っ込んで来た。ウチは体をグッと押されたような感じがして吹き飛ばされた。
叫んで駆け寄ったときにはもう、救急車が到着していた。たぶん、ウチも数分の間気を失っていたのだろう。全身血の色で染まっている彼の顔を震える手で触るとこれは夢だ。と念じ込んでしまった。
悪い夢なら速く覚めて。…そう何度も目をつぶって念じたが、やはりこれは現実なのだと思うのに時間が掛かってしまった。救急車で運ばれる彼と一緒に乗せられ応急処置を受けている姿を遠目で見ていた。





**





  あれから、どれくらい経っただろう。
彼が記憶をなくし、早1年半が経とうとする今、どれくらいあの頃の出来事を思い出しただろう。
相変わらず、彼の記憶が戻ることは無い。…だが、今思えば幼少の頃の思いでなんて彼にとっては辛い過去も抱えている訳で、無くなったことが重荷を軽くしていると思う。



時より、彼はこうウチに質問することがあった。


『…どうして俺の所へ来る』
『そりゃあ、アンタが心配やからや。アンタは覚えてないやろうけど、借りがあるねん!』
『俺にとっては邪魔なだけだ。さっさと自分のことでもしてろ』
『その台詞は何回も聞いてるで?…他の女の人とは違って、ウチには根性があるからそんな言葉は通用せえへんねんから!』
『…きっと俺に出会わなければこんな面倒も無いだろ。俺たちの出会いは偶然だ。』
『急に何言い出すねん。別にウチが好きでここ来てるから気にせんでええのに。……それに、ウチらの出会いはきっと偶然ちゃうで。運命や。』
『……アホ。』



――――偶然じゃない。運命なのだ。
そういうと、最後に返って来たのは合間があった悪口だった。ウチに顔を隠しているのかそれからはあまり顔を見せなくなった。
だが、ウチは少し嬉しかった。ソッと向ける彼の表情が少し笑っているように見えたから。カーテンがたなびく今日の病室も彼もウチ一人が独占する毎日となったのだから。


fin*



**
バッドエンド風のハピエンのつもり^^;
棗のキャラ崩壊すみません…!そして、遅くなってすみませんっ。美優、遅くなったけどもう1度言わせてっ!!happy birthday!*







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いやいやいやっっ!!
もらえただけでも嬉しいんです有難うございます…!!
いつも某掲示板でいろいろとお世話になっているお姉様にこんな素晴らしい小説をいただけて、管理人はとても幸せです//

…美優、という名前はどうしようかなと迷ったのですが、そのまま載せてしまいます。
某掲示板で私が使っているHNですので、気にしないでくださいませ^^
…ちょくちょく名前変えてますs(ry




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