胡桃様より(頂き物)










「――どこ行くん?」
「……どこか、遠い所」





夏の夕やけを大好きな人と2人乗りして通るのは、秘かなウチの夢やった。
彼――日向棗は自転車の後ろに乗ってウチの腰に手を回し額を背中に強く押している。その仕草が妙に違和感か感じるウチは話題を考えるのに夢中。
普通、彼氏彼女の2人乗りって、彼氏が前で彼女が後ろのはずやのに・・・ウチ等の場合は逆。






「なあ、棗ウチ等間違ってるよ」
「何がだよ」
「位置が逆やねん」
「……間違ってねーよ、俺が後ろでお前が前」





なんでやねん、と聞くと黙ってしまった。
月一回のデートなのに毎回毎回ウチが前で彼が後ろ。もう、これが当たり前になってる気がする。
ウチだって棗の後ろでこういう風に腰を組んでみたい。
やけど、何回言っても変わってくれへんからもう諦めかけてるって感じになってたとき――――…。







「……蜜柑」
「何や?」
「止まれ」





急に呟いた、止まれの合図。
ビックリして驚いて、急いでブレーキをかけたから体が前に飛び出した。





「なんや、急に」
「変われ」
「へ?」





本当に急で率直な棗の言葉に蜜柑は驚くばかり。
そして止まったら止まったで「降りろ」と言われ、一応指示通りに動く蜜柑。
すると、棗は蜜柑が驚く行動をしたのだ。





「乗れ」
「え?…ウチが後ろってこと…?」
「そうだよ、さっさと乗れ。追いてくぞ」
「ちょっ…!待ってーや」





彼の後ろに乗るウチ。初めて組む腰の仕草。
それも初めてで、それが何故だが嬉しいけどこのドキドキが心臓の音が棗に聞こえそうで。いつの間にか顔が横に向いていた。
棗は後ろに居た時こんな気持ちやったんかな、なんて考えた。





――――――今日の一日は、ほのぼのしたより甘酸っぱいデートだった。


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