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「いらっしゃいませぇ」


私がいつも贔屓にするガソリンスタンド。何故かっていうと、タカ丸さんがいるから。


「あぁ!また来てくださったんですね!いつもありがとうございます〜」

「へへっ、また来ちゃいました!あ、いつものでお願いしますね」

「はい。かしこまりました。窓も拭いときますね」


ここで働いてるタカ丸さんに、私は人生で初めての一目惚れをしてしまった。どこが好きといえば、ふにゃっとした柔らかい笑顔とか、ゆっくりと優しい物言いとか、さらさらの綺麗な金髪とか、いつも整っている身だしなみとか、仕事に真剣に打ち込む姿勢とか、ほかにもたくさん。探せばもっとある。話しててとっても楽しいし、すっごく素敵な人なんだ。

なんて、思っていたら窓越しにぱっちりと目が合った。タカ丸さんはいつもの笑顔でにこって笑ってくれて、私がどきどきしながらにこって返すと更にへへっと歯を出して笑ってくれた。これが私にとって一番幸せな時間。


「全部で2055円になりますね」

「はい、今日もありがとうございます」

「いいえ〜、またよろしくお願いします。…あ、そうだ」


タカ丸さんは頭の上にピコンと豆電球を浮かべると、何やらがさごそとウインドブレイカーのポケットをまさぐり、あるものを取り出した。


「…?これは……」

「差し上げます。車用の芳香剤なんですけど、僕この香りすっごく好きなんですよ。えへへ、僕の車とお揃いです、なんちゃって」


頭をポリポリと掻きながら、タカ丸さんは照れ臭そうにそう言った。心なしか少し頬が赤く染まっていた気がするのは私の思い過ごしだろうか。


「あ…ありがとうございます!」


私があたふたしながらお礼を言うと、彼はふにゃりとした微笑みを浮かべながら、


「またのご利用をお待ちしてます」


そう言って、帽子をとった。
私は、アクセルを踏んだあとも、バックミラーごしに彼を見つめていた。


タカ丸×ガソリンスタンド

(車だけじゃなくて、君も僕に染まってよ)





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