暁の空へ | ナノ


  118 どこ


「有梨?」
「え?あ、ああ、いや、相変わらずすごい構図だなーって!」


ほーらここなんていい感じー! と褒め言葉を一生懸命探して言うが、友達は怪訝な顔をする。


「どっか具合悪いの? 大丈夫?」
「えっ? あー、そういえばなんか朝から頭痛いんだよねーあはは」


酷いんだったら帰ったら? と言う友人に、私は無理に明るくそうしよっかな! と答えた。






















学校を早退した後、私はふらふらと街中を歩いていた。
すれ違う人達が、制服姿の私を振り返り怪訝な顔をする。

体調不良で早退してきたんだよこんちくしょう。
あ、でも体調不良で早退してきたのにこんな街中をふらふらしてんのはおかしいか。

どうして街中ふらふらしてるのか自分でもわからない。
けど、身体はそう動いていた。


「……あれ、」


気がつくと、大きな交差点の前で私の足は止まっていた。
信号は赤。

にしてもこんな大きな道路……
私結構な街の中心まで来ちゃったのかな。


ズキン……


「った………」


また鈍い痛みが頭を襲う。

ああ、早く帰って寝たいな……。
そうだ、帰ろう。
帰らなきゃ。


そう思って、踵を返した時だった。


ふらりと道路に向かう人の影が見えた。
一瞬だったが、私はその影から目を離せなくなった。

ふと信号を見ると、まだ赤のままだった。

影はふらふらと道路へ向かう。



……ちょっと待って、何で止まろうとしないの?

信号は赤だよ?
赤は止まれって小さい頃教わったでしょう?


影は止まることを知らないように、進み続ける。




止まらない気だ。




「ちょ、待って、待って!」


ズキンズキンと痛む頭を押さえて、私は影を捕まえた。


「ぇ………、」





「え…………」





振り向いた影は、真っ赤な目を大きく開き、私を見た。



















「………っ、」
「五十嵐?」


死んだように静かに眠っていた有梨が突然息苦しそうにし始めた。
口を金魚のようにぱくぱくと開閉している。


「五十嵐? ……おい、五十嵐…………五十嵐!!!」


俺は慌ててナースコールをプッシュした。


「五十嵐、」


俺は息苦しくする五十嵐の手を握った。




五十嵐………お前は今、"どこ"にいるんだ……………?

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