ハイキューアニメ2期おめでとう企画〜お題短編小説〜 | ナノ


  【ノヤ潔】変わらないもの




ふと自身のポケットが振るえていることに気がつく。

ジャケットからスマホを取り出すと懐かしい名前が表示されていて、少し驚きながらメールの内容を確認した。


「あぁそっかアイツ等成人したのか」


メールは高校時代の部活の後輩、日向からだった。

成人式の帰り道、駅で懐かしい面々にバッタリ会ったこと。

元バレー部の皆で集まらないかという話になったことなどが書かれていた。


(旭さんにも連絡したってことは…俺が2年の時のメンツか)



同じチームで戦い、皆それぞれ夢に向かい進学し、社会人となった。

今はバラバラな道を歩んでいる。

改めて考えるとなんだか不思議な気分だった。




高校生の時、1学年上の先輩に憧れていた。

男だらけの烏野排球部に咲く一輪の花、そんな風に言われていた彼女。


口数の少ない彼女が

「がんばれ」

そう言った時、皆で涙したのは今でも覚えている。


背が高くて美人な先輩。

(潔子さんにも会えるだろうか)












約束の日。

目を覚ますと約束の時間まできっかり12時間。


「早起きし過ぎた…」


どれだけ今日を楽しみにしていたのだろう。

朝の5時に起きるなんて…遠足が楽しみで仕方ない子供のようじゃないか。

二度寝をしようと目を瞑るが潔子さんのことばかり考えてしまい、それは叶わなかった。


「起きるか…」


カーテンを開けると外はまだうす暗く、はやる気持ちも少しばかり治まる。


学生時代は日が昇りきる前に起きて朝練へと急いでいたっけ。

懐かしく思う反面、もうあの頃のようには身体がついていかないかもと悲しくなったりした。



…皆、やはり変わってしまっただろうか。



彼女にだって恋人の一人や二人出来ていたっておかしくない。

いや、今までいなかったのがおかしかったんだ。



気付くとカーテンの隙間から太陽が顔を見せていた。














「よっす!」

「おぉ田中久しぶり!」

待ち合わせより早く着いてしまいどうしようかと思っていたところ、丁度良く同級生の田中が現れた。


「縁下とは会ってんの?」

「いや、最近は会ってねーな」


しばらく大学のことなんかを話しているうちにメンバーが揃っていた。

彼女も、いた。


「相変わらず美しいです!潔子さん!」

田中が懐かしい口振りで言う。

俺もその調子で何か言った方がいいだろうか。
そう思っても声を出すことは叶わなかった。



彼女は前よりずっと綺麗になった。





店に入り酒と適当につまめる物を頼み、久しぶりと乾杯した。


バレーのこと、
大学のこと、
新しい友人について。

皆楽しそうに話しているのに、内容が全然入ってこない。


自身の隣に座った彼女が気になって仕方がなかった。

何故隣に座ったのか。
期待をしてもいいのだろうか。

なんて。

馬鹿みたいに考えていた時、彼女が口火を切る。


「久しぶりだね、西谷」

「っすね!相変わらず綺麗で!ほんとびっくりしました」


まさか彼女の方から声をかけてくるとは!
緊張から唇が震える。


「会いたかったって言ったら、変かな?」

「え?」

「会いたかった、西谷に」


これは夢だな?
思うも彼女の真剣な眼差しから、夢であっても男ならば真剣に受け止めるべきだと思いを改めた。


「離れてから何かが足りなくて、西谷が足りないって気付いた」


やっぱり夢か?
自身の頬を引っ張ると痛い。これは夢じゃない。

と、いうことは潔子さんも同じように想っていてくれていたということで。

頭の中で何かが弾ける。


(え、マジで?)



「俺も、潔子さんにずっと会いたかったです」

「うん」

「潔子さんを想う気持ちは変わってません」

きっとこの想いを彼女は受け取ってくれる。





「変わらず、俺は潔子さんが好きです」


その日俺達は恋人同士になった。


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