【ノヤ潔】君は太陽だ。
高校生時代に付き合い、約二年。
お互い大学生になり、少し大人な恋愛を始めた頃。
「潔子さん!同棲しましょう!」
彼の言葉に固まってしまったのは仕方のない事だと思う。
「…同棲?」
「俺、潔子さんともっと一緒にいたいんです!」
ね、いいでしょう?
満面の笑みを浮かべ言う彼に嫌なんてことは言えない。
だからといって、すぐに「はい」とは言えなかった。
衝撃的な出来事に、頭はパンク寸前。
一人では解決出来そうにない。
「まだ返事してないの?」
「断れないし…」
相談にのってもらったのは高校時代の同級生、道宮 結。
男子バレー部のマネージャーだった私と、女子バレー部主将を務めていた彼女。
彼女とは男子バレー部の主将、澤村を通して知り合い仲良くなった。
「忠犬だよねぇ」
「忠犬?」
「もう一週間になるっけ?待っててくれてるんでしょ?返事」
考える時間が欲しいと言ってから一週間。
確かに彼女の言う通り、彼は私の返事を怒りもせずにじっと待ってくれている。
「でもなんで嫌なの?付き合って二年になるならいいんじゃない?」
「一緒に住むとなると…裸を見るかも、とか」
「裸くらい良いんじゃない?」
「それが…その、」
彼と付き合って二年。
しかし彼との付き合いはとても清いものでキス以上の事をしたことが無い。
それなのに一緒に住もうとは、自分にはハードルが高すぎる。
「…彼、あれで奥手なわけ?」
「奥手というか…そ、そういうものなのかと思っていたわ」
「はぁ…今話してたこと、本人にそのまま言いなよ?」
二人でちゃんと話し合った方が絶対いい!
そう言われて彼に会って話がしたいとメールした。
返事はいつもよりあっさりと
「わかりました」
とだけ書いてあって、少し不安になった。
近所の喫茶店で待ち合わせをして、二人で店に入る。
ゆったりとしたボックス席に向かい合って座った。
今まできちんとした話し合いをしたことが無かった為、少しばかり緊張してしまう。
「私達付き合って二年になるけど…その、キス以上のことはしたことがないから、だから同棲のこと悩んでたの…」
「なんだ…同棲のことっすか」
ほっとした顔を見せた彼は
「別れ話かと思って緊張してた」
そう言って笑った。
「潔子さんが大事だから、そういうことは潔子さんがしたいって思ってくれた時でいいんで」
大事だと言われてとても嬉しかった。
でも同棲となると…やっぱりそう考えてしまう。
「俺ね、潔子さん中心に回りたい」
「え?」
「朝起きて一番におはようって言いたいし、いってきますも、ただいまも一緒がいいんだ」
潔子さんは俺の太陽だから。
だから俺は潔子さんを中心に生活したい。
そう言った彼の笑顔が眩しくて、私は何も言えずにただ頷いた。
君は太陽だ。
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