59 一発[主人公side]
[主人公side]
『あれ?そういえば高等部からの音、聞こえなくなったね』
何となく話題が気まずかったので、話題を変えた。
さっきまで生徒たちの暴れる音が聞こえていたが、いつの間にか無音になっていた。
『……あ』
高等部の校舎の方を見ると、皆が出てきた。
先頭にいた玲生兄と目が合うと、玲生兄は笑って右手の親指をたてた。
しかし後ろの皆の表情は不満気で……
私が皆のところへ行くと、やっぱり玲生兄だけが清々しい表情をしていた。
『どうしたの?』
「俺が一発、声フェロモンをドカンとやったら一瞬だった!」
にかっと玲生兄は笑う。
……なるほど、せっかく意気込んで行ったのにやることはなかったってとこか。
私は余りにも皆の表情が駄々っ子のようで笑ってしまった。
リョーマがムッとして言う。
「俺たち耳塞いで何人か運んだだけなんだけど」
『ふふふ、そっか、でも怪我がなくて良かったははは』
「紗那笑いすぎ」
「おい」
笑っていた私の後ろから棗くんが声をかける。
「早く行った方がいいんじゃねぇのか」
『あ、そうだね』
跡部先輩、白石先輩たちのところへ。
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