溺れた魚
ナルトの傍にいるとうまく呼吸ができない。苦しくて、だけどとても心地いい。だから私はナルトのそばから離れられない。離れたくない。 制止の言葉を聞かずにナルトが乱暴に唇を奪う。それはお互いの酸素を貪るようでいて全然貪れていない。だからすぐに息が切れてしまって苦しくなる。ナルトは苦しくないのか、それとも肺活量の違いかそんな素振りなんて見せず私の口内を犯し続ける。 くっついては離れる度にお互いの唾液でベトベトになってしまった唇が見えて私のがナルトのをそうしたんだと思ったら少し嬉しかった。 「んっ」 ナルトの舌が上の歯を這うその感触にゾクリと私の体が震える。いつまでたっても慣れないその感覚はくすぐったいようなでも気持ちいいような変な気分になる。ナルトはそれがわかってて、いつもそこを攻めてくる。 「ん、やっ……も、」 体中を走るゾクゾクくる感覚に耐え切れなくてってもう無理とナルトの服を引っ張る。だけど、なかなか止めてくれない行為についに私の足が耐えられなくなった。 ガクッと落ちる体をナルトが慌てて支えてくれる。 「あっぶねぇ」 ビビったーと笑うナルトに息が切れてヘロヘロな私は息を整えるのに必死でなにも言えなかった。そんな私をナルトがジッと見つめる。なんだろうと、私も息を整えながらもナルトを見つめる。 「あー、やべぇ」 唇の端からすでに溢れてしまっている唾液をペロリと舐めたあと静かに私を見つめるナルトの瞳にはさっきよりも濃く熱がこもっていた。 「ナ、ルト」 チュッと今度はナルトの唇が首筋を伝う。くすぐったさとゾワゾワする感覚に小さく声が漏れてしまう。それがなんだか恥ずかしくて手で口元を覆うとしたけど、すぐにナルトに捕まって隠すことができなかった。 「声、もっと聞かせて」 耳元でそう囁かれて顔に熱がこもる。たまらなくてブンブンと顔を横にふる。 「の甘い声聞きたい」 「やっ、そんなこと」 言わないでとナルトを見つめれば軽い口づけをされる。 「、その目やべーからマジで」 「そ……」 それはナルトのほうだよと言うとして、だけど何度目かの口付けに邪魔された。自分が今どんな顔をしてどんな目でナルトを見ているかなんてわからないけどやばいと言うナルトだってすごく男の人の顔をしててやばい。普段は見せない色気がそこにあって、熱がこもっているその青い瞳を見るだけで私の体が簡単に熱くなることをナルトは知っているんだろうか。 「んっ、は……」 ちゅ、と唇が重ねては離れるを繰り返す。次に首筋にも同じように吸い付いてきた。 「あっ」 目立つところに跡はつけてほしくないと、とっさに服を引っ張る。だけど、ナルトに触れてもらえるのは嬉しくて気持ちよくてもっとして、とそんな矛盾を感じているのも確かで。ナルトの手が優しく私の体をなぞるたびに服を握っていた手の力が緩んでしまう。 「は……っ、ごめんもう……」 続きは言われなくてもわかっていた。私もきっと同じことを思っている。ナルトの目が私を欲しいと言っている。それが嬉しくて今度は自分からナルトの唇を奪った。口付けをかわしながら乱暴にベッドへ倒れる。その拍子にギシッとベッドが鳴いた。 「わり、今日は優しくできねぇかも」 キスを中断してナルトが言ったセリフに心臓が大きく跳ねる。自分を必死に抑えているナルトを見たら急に息苦しくなった。唇は塞がれていないのに息苦しくて、まるで水の中にいるみたいだ。息苦しくて泣きたい。ナルトが好きだと泣きながら伝えたい。 「……ナル、ト」 「」 目の前にいる相手の体温や香り、感触を堪能し酸素を奪い合う。酸欠になった頭で迷うことなく相手を求め続ける。 ああ、そうか私は溺れているんだ。ずっと私はナルトに溺れていて、だから彼の隣はこんなにも息苦しくて愛おしいんだ。そう気付いたのはナルトが私の耳元で「愛してる」と囁いた時だった。 |