love interest
いとも簡単にオレに触れてくるがかわいくてムカつく。 がオレのことを男として見てねぇなってのは知ってる。こういうのは嫌でもわかっちまうんもんだ。簡単に触れてくるし抱きついてきたりもする。それはまだいいとしてオレの家が落ち着くからと頻繁に出入りしたり終いには泊まってもいい? なんて言ってきやがる。男の部屋に泊まろうなんていくら仲良くてもすんなっ! 「ナルトー、服かして」 そう思っていても断れないオレもオレだけどさ。 「ほら」と自分のシャツを渡せばかわいい笑顔でお礼を言う。嬉しそうに浴室へと向かった。一日くらい自分の服でいいとオレは思うけど彼女はそれを嫌がるから泊まるときはたいていオレの服に着替える。オレのシャツはやっぱ女のには大きいのかダボってしてて、その姿がこれまたかわいくてたまらない。できればずっと見ていたいけど見てたらオレなにすっかわかんねぇからなるべくを見ないようにいつも無理やり視線を外す。だけど本当は見たい。じっくりと。そして最後にはめいいっぱい抱きしめたい。 浴室から聞こえるシャワーの音にドキドキしながらが出てくるのを待つ。 今みたいにドキドキしてるのはいつだってオレだけだ。 「オレだって男だぞ」 悔しくて声にだしてみるがシャワーを浴びているに届くはずもなかった。 「気持ちよかったー」 しばらくして浴室からでてきたの気配に体がビクッと反応する。風呂上がりのはいつも色っぽいから視線をどこにやせばいいのか迷う。ごまかすように冷蔵庫から牛乳を取り出して飲んでいるとそれを目にしたが「私も飲むー」と近寄ってきた。それに慌てたオレは牛乳を違うとこに入れてしまい大きくむせてしまった。 「え、だ、大丈夫?」 ゲホゲホむせているオレを心配しての手が背中に触れる。その熱に体が熱くなっていくのがわかった。背中を優しくさするの手はオレの色んなものをぐちゃぐちゃにする。 はいつだってそうだ。オレの気持ちなんて知らずに簡単にオレに触れる。それがすげー嬉しいのにすげーイライラする。 「大丈夫? 別に急いで飲むことなかったのに」 落ち着いたオレの背中をまださすりながらそう言うは小さく笑う。 別に急いで飲んだせいでむせたんじゃない。むせたのはの格好に驚いたからだ。 「、その、下ちゃんとはけって」 そう言えばは一瞬不思議そうな顔をしてから「あー」と声をもらした。 「大丈夫だよ。ナルトの服大きいから」 大丈夫じゃねぇから言ってんだっつーの。つか、どんだけでかくても寝たらめくれるだろっ。 「いいからなんかはけってばよ」 「あ、ナルトもしかして照れてる?」 オレの気持ちなんて知らずにはそんなセリフを吐いてオレを茶化してくる。悔しくて「んなわけねーし!」と言えば「ひどい」との拗ねた声。 「どうせ私の太ももに魅力なんてないですよー」 悔しそうにがペラっとシャツの裾を摘むもんだから白い太ももが更にむき出しになる。慌てて目を逸らすがバッチリ見てしまった太ももを思い出してクラクラした。魅力がなかったら今オレはこんなにも苦しんだりしてねぇ。 男の前でそんな無防備な格好してもしかしてオレをからかってんのか。それとも誘ってんのか。 なんかイラっとして少し睨めばはオレが怒ったと思ったのか気まずそうな顔をして「わかったよ。何かはく」としぶしぶ頷いて向こうに行った。のそんな顔が見たかったわけじゃねぇからちょっと落ち込んでしまう。謝ったほうがいいだろうかと迷っていたらすぐにがやってきた。戻ってきたはちゃんとズボンをはいていたがそれがオレの短パンでこれまたブカブカだ。基本オレの服はゆったりしてんのが多いから余計にでかく見える。全身オレの服でコーディネートしてるはマジでかわいい。すんげーかわいい。ギュって抱きしめちまいたいのをなんとか堪えて平静を装う。こういうオレの気持ちいい加減にわかってほしい。マジで。 「ズボンかりた」 小さく報告するにうんと頷く。やっぱしあんまり見てられなくてすぐに背を向けたオレにが「まだ怒ってる?」と不安げに聞いてきた。 「いや、怒ってねぇーけど」 最初に睨んだのだって別に怒ったんじゃない。イラっとしたのだって男として見てもらえない自分に対してだし。本当に怒ってねぇんだけど、はそうは思わなかったらしい。「うそ!」とが叫んだ。 「だってナルトさっきから全然私と目を合わせないじゃん」 それはの格好に問題があるからだ。そもそもこの狭いアパートにカップルでもない男女が二人きりでいるということが一番の問題な気もするが。 「最近なんて、しゃ、喋りかけても上の空が多い気がするし。と、泊まっていいか聞いたときはいつも微妙な顔するし」 喋り続けるの様子がおかしいことに気づいてそろりと振り返る。その瞬間自分の顔がサーっと青く染まった。 泣いている。 が泣いている。 どうしようと焦るけどどうしていいかわかんなくてそのまま顔を青くしているとが更に続けて口を開いた。 「わ、私のこと……き、嫌いになったんでしょう?」 「ち、違う!」 が言った内容に驚いて咄嗟に首を横に振って否定するが納得してくれるはずもなかった。 「い、いいよ。言いにくくて黙ってたのわかるから」 「いや、本当に違うんだって」 「なにが違うの!」 「オレがお前を嫌いになるわけねぇーから違うって言ってんだっ」 伝わらない気持ちにイラついてオレもつい声を荒らげてしまう。少し怯えた目でオレを見つめるの視線にグサッと胸の辺りに何かが刺さった気がした。 オレがを嫌いになるなんて……むしろどうやったら嫌いになれるんだっていうくらいにオレはが好きで好きでたまんねぇのに。 「う、うそだ。じゃあなんで私を避けるような態度するの?」 「そ、れは……」 ゴクリと喉がなる。 はオレを男して見ない。いつだってそうだ。無邪気に触れてくるし抱きついてきたりだってする。まるで同性の友達にそうするかのようにいとも簡単にオレに近づいてくる。オレばっかドキドキして動揺して……。少しでもオレを意識してほしい。意識して動揺すればいい。目の前にいるヤツが男なんだって気づけばいい。そう思ってオレは今まで抑えていた気持ちを口にする。 「……がかわいいから」 不安そうに揺れてる瞳。それが大きく開いた。オレをただ見つめるに向かって再び口を開く。 「がかわいすぎてたまんねぇから」 「……ナ、ルト?」 「がんな無防備な格好でいんのにまじまじ見れねぇって」 オレの言葉にどう反応していいのかが少し焦っているのがわかって嬉しい気持ちがジワっと滲む。もっと、もっとオレを意識しろ。 「さっきからずっと、今だって、をめちゃくちゃに抱きしめちまいたいの我慢してるんだっていい加減――」 一度言葉を切って深く息を吐く。 「いい加減、気づけってばよ」 強く握っている両手が若干震えているのが嫌でもわかって自分のカッコ悪さに舌打ちしたくなる。その時、目の前にいたが驚きすぎたのかズルっとそのまま床に座り込んじまった。 え、もしかして座り込むほどショックだったのか、と慌てて駆け寄る。 「だ、大丈夫か」 座り込んだはポロポロ涙をこぼしていてオレを更に不安にさせた。な、泣いちまうほど嫌だったのかまさか。顔を青くしてるオレに向かってが小さく声をもらした。 「う、そだ」 「?」 「気づいてない、のナルトのほう」 「え?」 オレが気づいてないことってなんだよ。え、オレに無意識になんかしたか? 言ってる意味がわかんなくてを見つめるが変わらずポロポロ涙をこぼしてる。 「ナル、トはずっと私を意識して、くれなくて……」 い、や、いやいやいや。それは、のほうだ。だって簡単にオレに触ってくるし抱きついてくるし。あれはオレを意識してないからできることだろう? 「私が触ってもだ、きついてもナルトふ、つうで」 だからそれはのほうじゃねぇか。 「こ、うやってナルトの服、かりたっていつも通りだし」 が瞬きをするたびに涙が頬を伝って落ちる。オレのシャツにいくつもシミができるのをオレはただ呆然と見つめていた。 「わ、たしばかりドキドキして」 「」 たまらず引き寄せた小さな体。想像していたより柔らかくてあったかくてオレがいつも使ってるシャンプーの香りがした。嗅ぎ慣れてるはずなのにから香ってるってだけでひどく心臓が騒ぐ。 「意識してねぇのはのほうだ」 耳元でそう言えばピクリとの肩が震えた。 「オレがずっと耐えてんのに簡単に触れてくるし抱きついてくるし、終いには男の一人暮らしの部屋に泊まるとか」 襲われても文句言えねーんだかんな、と少し怒りを含めて言えばは小さく「ナルトにしかしないもん」とオレの背中に手を回してきた。更にギュッと縮まった距離に心臓が今にも爆発しそうなぐらいにうるさくなった。それと同時に胸がギュッと締め付けられるような感覚が襲って苦しくって切ないなんとも言えない気持ちになった。 そうか、これが愛おしいってことなのか。 鼻の奥がツーンとして涙が出そうになる。が好きすぎておかしくなりそうだ。 「ナ、ルト、く、るしい」 無意識に腕に力が入ったらしい。の声に慌てて腕の力を弱める。大丈夫かな、と様子を見れば顔をあげたと目が合った。 「あ、のナルト」 弱々しく名前を呼ぶになんだ? と表情で先を促す。 「そ、の意識してるってことは私のこと……」 えっと、と口ごもるを見てああそう言えばちゃんと伝えてなかったなと気づく。 「が好きだ」 彼女が求めてるであろう言葉を口にすれば静かにオレを見つめた後顔を真っ赤に染めた。 「わ、たしも好き、だけど」 「だけど?」 だけどっているか? ここは好きだけでいいだろうと素直に告白してくれなかった不満に眉を寄せる。 「ナ、ルトの好きってラーメンが好き、とかの好きじゃないよね?」 今更何を言うんだ。 好きでたまんなくてを抱きしめてオレでいっぱいにしたいっていう葛藤と今まで戦ってきたっていうのに。 やっぱりはわかってない。 腹がたってオレの名前を呼ぶ唇に自分のを少し強引に重ねた。柔らかくて弾力のあるそれを何度も確かめるように唇を動かす。そんなんじゃ全然物足りなくて今度は舌で唇をチロチロ舐める。驚いてが唇を開いたのをいいことにそのまま舌を侵入させて中を這い回ればがオレの服を強く握ってグイグイ引っ張ってきた。それでも行為を止めることなくそのままの舌を自分ので絡めたり、吸ったり、甘噛みしたりと欲望のままに動かす。そのたびにビクビクとの体が動いたりたまに吐息や小さく声なんてもらしたりするから余計にオレは行為を止められなくなる。 唇がやっと離れたのはの体から力が抜けてぐったりしてからだった。息を乱して荒く呼吸を繰り返すはまた涙を流していたがそれがさっきの涙とは全然違うもんだっていうのはオレでもわかった。 その涙を拭って名前を呼ぶと潤んだ瞳がこちらを見る。ふいにゾクリとした感覚が自分の体を走った。また触れたくなるのを堪えて何か言いたそうに見つ続ける彼女に向かって口を開く。 「が好きだって言ったろ?」 ちゃんとわかったか、と訊ねればが何度も頷いた。 *** やっと呼吸が落ち着いたを見つめて「大丈夫か」と声をかける。不満そうな顔でキッっと睨まれた。やっぱいきなし深いキスはまずかったかと素直に謝罪する。本当はちょっと軽くくっつけるだけのつもりだったんだけど、の唇があまりにも気持ちいいし反応もかわいいから止めらんねぇってあれは。なんて心の中で言い訳してみる。 すると、難しい表情をしたに名前を呼ばれた。その声もどこか元気がなくてオレまさかもう振られちまうのかと一気に不安が広がる。 「ナ、ルトって、その……初めてじゃない、よね?」 「初めてって……なにが?」 ナルトと付き合うのやっぱり無理! とかそういうんじゃなかったことにかなりホッとする。さすがにそう言われたらショックすぎて立ち直れねぇ。 「だ、から……キス」 「……ああ!」 キスのことか。キスが初めてじゃないってことか。 いや、オレとが初めてだって――。 そう言おうとして嫌な過去を思い出してしまった。 キス……したな、あいつと。あの唇が腐るような感覚は思い出したくもねぇ。ていうかさっきので上書きされたからはっきりいって思い出そうにも思い出せねぇけどな。 オレがなかなか答えないのをは肯定と受けとったのか「やっぱり初めてじゃないんだ」と悲しそうに顔を歪めた。 「え、いやでもあれは……」 「だからあんなにうまかったんだ」 オレのセリフを遮って言ったの言葉に素直に驚いた。え、うまかった、のか? オレただ自分の好きなようにしてただけなんだけど。驚くオレをキッとは睨んで体をゆっくり起こす。まだふらふらな体を慌てて支えればはそのままギュッとオレにしがみついてきた。 「ど、どうし――」 顔をあげたと目が合ったと思ったら柔らかな感触がオレの唇に当たった。なにが起こったか一瞬理解できず固まるオレをよそには何度もその柔らかい物を何度も当てたり離したりを繰り返す。言わずもがなそれはの唇で。わかった途端に全身が熱くなる。 「ほ、かの人の、キスなんて、わすれて」 悲しそうな顔で何度もちゅ、ちゅっと唇をくっつけるが途切れ途切れにそう呟いてて意味がわかった途端なんかもう色んな気持ちがガーッと押し寄せてきた。たまらずそのままを押し倒してさっきとは比べ物にならないくらい荒く唇を重ねる。それを苦しがっても嫌がらずに今度はからもおずおずと舌をだしてきた。あー、もうかわいすぎだっ! それをまた欲望のままに絡めるとの体がピクピクと反応を示した。今度は酸欠にならないようにと唇を軽く離せばが「や、だ」と自分からまたキスを再開させる。キスの合間にオレの名前を何度も呟くがかわいくてかわいくてたまんねぇ。今日と言わずもうずっとここに泊まればいいのに。一生オレのそばにいればいいのに。 酸欠気味でボーッとする頭の中でキスの相手が男で事故だったってことはしばらくには内緒にしようと誓った。 |