残す
今日のナルトは少しおかしい。 「ナルト、待って」 私の制止を無視してまるでそうするのが当然とばかりにナルトは太ももを撫でる。自分とは違う大きくてしっかりした手。それがするする動くのはくすぐったくて変な感じ。それと同時に首筋を強く吸われるからくすぐったいだけじゃない感覚が体を走る。ナルトに触れられてる部分が熱い。思わず溢れそうな声を抑えてどうしてこうなっているのかを考えた。 ナルトの任務が無事に終わって、ゆっくりできる貴重な休日。この前はナルトが家に来てくれたから今度は私が、とナルトの家を訪れた。けど、来てそうそうこんな熱烈な歓迎をされるとは思いもしなかった。 ナルトの手は私の腰や太ももを撫で続けているし首筋もキスの合間に軽く吸ったりされて自分の意に反して小さく声がもれてしまう。 私の反応にナルトの手の動きが少し荒くなった。 くすぐったいのにゾクゾクした感覚が止まらなくて目がじんわりと熱くなる。 「……ま、って」 それでも絞り出して言うとナルトが私の首筋から口を離した。 「オレってば待つのニガテ」 カップラーメンの3分も好きじゃねーし、なんてこの場に似つかわしくないセリフを吐いてナルトはまた私の首筋に唇を落とす。ナルトが動くたびにどうしようもなく体が震える。 ナルトはくっつくのが好きらしい。だからって誰でもいいわけではなくて私にくっつくのが好きらしい。くっついて自分のとは違う温もりを感じるのがなんだか安心して落ち着くんだと私を抱きしめながらポツリと言っていたのを思い出す。だけど――。 「、口開けて」 だけど、これはいつもと違ってただくっつくと言うより、は、発情しているみたいな、そんな感じに見える。 「、口」 耳元で囁くように呼ばれた声にゾクッとした感覚が背中を走る。いつもより低い声と共に吐かれた息は熱くて、それが耳もとをかするたびに、体が自然と小さく動いてしまう。たまらず小さく開けるとそれを狙ったかのように素早くナルトが私の唇を覆う。すぐに入ってきた舌は私の口内で暴れたかと思えば優しく歯列をなぞったりとなんとも言えないゾクゾクとした快感を与えてくれた。 「……ふっ」 声にならない声が合間にこぼれる。 ツーっと垂れてしまう涎を無視して行う深いキスにどんどん酸素が失われ頭がボーッとしてくる。きっと、立っていたら足が快感と酸欠に耐え切れなくてずるずる座り込んでいたに違いない。 やっと離れた唇に私は慌てて酸素を吸い込む。息を吸うのも少し苦しい。まるで走ったあとみたいだ。ナルトは息を整えてる様子すら見せない。これが一般人と忍びの違いなのだろうか。ナルトがまた首筋に顔を埋めるので先に反応して体がビクッと動いてしまう。今度はちゅ、ちゅ、と態と音を立てるから恥ずかしくてたまらない。どんどん唇が下におり坐骨でやっと止まった。かと思ったら強くそこを吸われる。ピリッとした痛みにやっとナルトがしようとしていることに気づいた。 「ま、そんなとこ……」 もしかしたら見られるかも知れないのに、とナルトの服を引っ張るが私の力じゃびくともしない。結局そのままナルトの好きなようにさせるしかないんだと諦めたのは顔を上げたナルトと目が合ったとき。満足げなそれに見つめられて私はなにも言えなくなった。 「これでがオレのだってみんなわかるよな」 自分がつけた跡を撫でてナルトはひどく嬉しそうだ。 「な、にそれ」 私とナルトが付き合ってることは大体の人が知ってると思う。とくにナルトの同期はみんなが知ってることだ。なのに、みんなにわかるように跡をつけるだなんて。 「……ナルト、キスマークは本来他人には見せないのが礼儀なんだよ」 やっと整った呼吸もそこそこに告げればナルトはわかりやすく不満な表情を見せた。 「でもそれじゃマーキングになんねーじゃんか」 予想外の言葉にパチパチと瞬きする。 え、ま、マーキング? なに、なんでマーキング? 「ナ、ナルト……マーキングって」 「マーキングっつーのは、ほら犬や猫がするやつだって。匂いつけてこれは自分のだって主張するやつ……であってるよな?」 ナルトは自分の説明があっているか首を傾げ考えている。けど私が聞きたいのはそういうことじゃなくて。 「そ、そうじゃなくてなんでいきなりマーキングなんて」 本来、マーキングは動物が縄張り主張のためにするもののはず。私たちも動物ではあるけど、だからといってマーキングなんて行為をしたりはしない。というかナルトの口からマーキングという言葉が出てきたのは不思議だ。もしかして誰かに何か言われたのだろうか。 「なんでって……。だってはオレのだって印をつけたかったつーか」 ギュッと私を抱きしめて言うナルトはどこか不安げだ。これから私がだれかに取られるとでも思っているのだろうか。 「オレ、里のみんなに言いたい」 「ナルト?」 私を見つめるキレイな青い瞳がゆらりと揺れる。 「里のみんなにはオレのだって言いたい」 どうしたっていうんだろう。こんなにも独占欲がむき出しになることってあまりないのに。普段、小さな独占欲は見せるけどでも私のことを思ってか大きなわがままは口にしないのに。 「くやしい」 苦しげに吐くナルトの声は若干掠れていてひどく色っぽく聞こえる。 「の匂いはオレだけが知ってればいいのに」 「え、におい?」 「他の男がの匂い知ってるなんてオレ嫌だってばよ」 思わず聞き返せば拗ねた様子で返される。 「わ、私の匂いを知ってる人がいるの?」 そっか、忍びはいつも不審者がいないか里を監視しているんだ。ということは里にいるみんなの匂いを知っている人がいてもおかしくない。門のとこにいる犬だってかわいいけど、里に住んでいる人以外は吠えるように訓練されてるはずだし。でもそれって仕方のないこと、じゃないの? 「……キバとか」 キバくんって、えっといつも大きな犬といる彼のことだよね。犬と同じで鼻がいいって聞いたから、そっか私の匂いも知ってるんだ。でも、それでマーキングって言葉が出てきたんだと一人納得する。 「この前さ、家に泊まってそのまま任務に行った日。途中で会ったキバにの匂いがするって言われて」 嬉しかったけどそれってキバがの匂いを知ってるってことだろう? とナルトは悔しそうな顔をする。 なんでも忘れさせようと頑張ってはみたけど失敗したらしい。一体、なにをして失敗したというんだろう。すごく気になるけど聞きたくないような……。 「で、失敗して悔しいからこれはに変な虫がつかねぇようにもっとオレの匂いつけとかなきゃって」 頑張る方向がなんだか違うような。しかも、つけたの匂いだけじゃないし。 「いや、匂いは鼻がいいやつしかわかんねぇって言われたから目でもわかるようにな」 それでキスマークも追加したのか。 「けど、こんなちっちぇーのじゃわかりにくいよな」 跡をつけた部分を見つめて「もっと大きく……いや、いっぱいつけるか」と平然と言ってのける。 ちょ、ちょっと待って。たくさんつけるって……別にい、嫌じゃない。好きな人がつけてくれるんだから嫌ではないよ。けど、その跡を誰かに見られた日にはもう恥ずかしくて私その人と顔合わせられないよっ! 「そ、そんな跡なくっても私はナルトのだよ」 彼の行為を止めるために言ったけど私の発言の内容のほうが恥ずかしい気がする。顔が熱くなりながらも驚いて私を見つめるナルトに向かって口を開く。 「ふ、不安なのは私もだけど、でもナルトが好きって気持ちは誰にも負けない。だから跡がなくっても私は――」 ナルトのだよ、と言おうとしたけどその彼に邪魔された。勢いよく唇が重ねられたから。勢いがよすぎたのか歯が当たる。それと同時に感じたチクッとした痛みに顔をしかめるけどそれでも乱暴に唇は動く。また襲ってくる息苦しさに簡単に声がこぼれる。けど、今回はそんな苦しさも長くは続かなくてすぐに解放された。 「そう、だよな。オレってばなんか焦ってになにかオレの印つけなきゃって思ってたけどそんなのなくっても好きって気持ちがあれば大丈夫だよな」 そう言ってナルトはいつも通りの笑顔を見せた。それにホッとして私もつられて笑顔になる。 「あー、でも」 とナルトは大げさにゴホンと咳をしたかと思うと真剣な表情をする。 え、なにか他の問題でもあるのだろうか。 「でも、やっぱはオレのだって体に残していい?」 そのセリフに驚いてナルトを見つめる。 「も不安って言ってたのは聞き逃せねぇし」 「え、あれは……」 しょうがないことだと思う。 ナルトは里の忍びでかっこよくて素敵だから。それは不安になるよ。でも私はただの一般人。むしろナルトが不安になることのほうが私は不思議でたまらないのだけど。 「だからが不安になんねぇようにオレのだってつけとく」 意味がわかったのはナルトが私を押し倒し耳元で「何度もキスしてたら我慢できなくなった」と囁かれたときだった。 「今日は何回までできっかなー」 はいつも途中でダウンしちゃうもんな、とこれからする行為に似合わない笑顔を見せて言うナルトに私は顔を赤く染めながらも黙って身を任せる。 結局、私もナルトになにか証を残したいのだ。 |