ごちそうさま
「ナルトくんって本当ステキだよね。サクラはいいなぁ。班が同じだとほとんど一緒にいられるんでしょう?」 ステキでかっこいいナルトくんをずっと見ていられるだなんて羨ましいと目の前にいる友人、は小さくため息を吐いた。 一緒にお昼でも食べようよと彼女を誘ったのは私だけど、さっきから会話の内容はあのおバカの話しかしていない。のセリフに同意できない私は口元をヒクつかせるしかなかった。せっかく頼んだペペロンチーノをうまく味わえないこの状況をどうしたものだろうか。目の前の彼女はうっとりどこか遠くを見ている。恋煩いと昔の人はよく言ったものだ。これは本当に一種の病気である。 確かに昔のナルトに比べれば今はけっこうそこそこいいのかもしれない。だけど、まだマシってだけで、あいつは変わらずバカだ。任務では周りを見ないで突っ走るし、大抵は人の話を聞かずに飛び出す。一番腹が立つのは未だにお色気の術というエロ忍術をしていることだ。この前だって木ノ葉丸とそれで勝負してたあのシーンをにもぜひ見せてやりたい。そうすればステキだなんて言葉でなくなるんだから! 思い出したらムカムカしてきてパスタを思いっきり口に入れた。ピリッとした辛さが今の気分にはちょうどいい。パクパク口にいれていると、目の前のが大きく反応を示した。 「ナルトくん」 その声にが見ているとこに視線を移動させるが、どこにいるのか私にはさっぱりわからなかった。大きく目を開いてこれでもかと見つめる彼女の姿はもうなんていうかすごいとしか言えない。食べている席はテラスなので外はよく見回せる位置にいるにはいる。が、今はお昼どき。近くに商店街もあるしさすがにちょっと混んでいて賑やかだ。この中から特定の人物を見つけるのって少し大変かも。 そう考えていたら向こうもこっちに気付いたらしい。近付いてくる影に、やっと私の目はナルトを捉えた。 「よう! 二人ともここで昼メシか」 「まーね。そういうあんたは何してんの」 さっきまで騒いでいたはずのはナルトが来ると急にもじもじし始め、下を向いている。おいっ! さっきまでのテンションはどこいったのよ! しゃーんなろー! 「さっきまで違う班の手伝いで任務に入ってた」 私のとこには話がきてないってことは本当にただの助っ人ね。ナルトってば中忍試験受けてないから未だに下忍だし雑用とかをいいように言われてさせられてるに違いない。 「お疲れさま、ナルトくん」 やっと口を開いたは頬を赤くしてナルトを見ている。待って。どこにそんな赤くなる要素があったの。いつどこでときめけたわけ? 「サンキュー。いいな、パスタか。オレも腹減ったなぁ」 「あ、ナルトくんも一緒にどう?」 隣のイスから慌てて自分の荷物をどけるを見てナルトより私のほうが驚く。え、一緒にって私もいるんだけど。この三人でいったい何の話をする気よ、! 椅子をちゃっかり自分のほうに寄せつつ空けた席にナルトは礼を言って腰かける。驚いていたわりにはすっかり受け入れての隣に座るナルトはどこか嬉しそうだ。メニューを広げてどれも美味そうだな、なんてノンキに喋っているように見えるがにやけそうになっている表情が隠しきれていない。もしやこいつもと同じ病気か。ヒクヒクと自分の口元が歪む。 「ちゃんはなに食べてるんだ?」 「えっと、これはサーモンのクリームパスタだったかな」 そのパスタはのもとへやってきてから随分経つのに全然減っていない。きっともう冷めてしまっていることだろう。 「それも美味そうだな」 「美味しいよ。あ、もう冷めちゃってるけど味見してみる?」 「え、いいのか」 驚いているがやっぱり嬉しそうな笑顔。それに笑顔でいいよと自分のパスタを差し出すもどこか嬉しそうだ。傍から見ればまるでカップルかのような光景に私はいたたまれなくなる。 「んっ、冷めててもうまいな」 ナルトの感想んには更に嬉しそうに微笑む。それに見とれるナルトの顔のだらしなさときたらっ! もう少し顔をキリッとしめなさいよ。まったく。 「あ、ここピザもあるのか。ピザ食おうかな」 「ピザも美味しそうだよね。パスタとどっち食べるかちょっと迷ったよ」 はナルトが広げているメニューを横から覗いている。その近づいた距離にナルトが頬を赤く染めてを見つめていることに彼女は全然気づいていない。目の前にいる私にはバッチリ見えてますけどね! 「あ、じゃあ、ちゃんも一緒に食おうってばよ」 「え、いいよ。ナルトくんのご飯だし」 それにまだパスタが残ってるし、と言うにナルトはじゃあ半分こにしようと提案してきた。 「え、でもこのパスタ冷めてるし」 「さっき冷めてても美味かったし、大丈夫!」 半分に分けたらどっちの味も楽しめるだろう? そう言って笑うナルトには照れながら頷く。いい加減突っ込みたいこの空気。私一人置いて二人で会話しすぎじゃない? 態とらしく大きく咳をすればナルトは私の存在にやっと気づいて「サクラちゃんもピザ食うか」なんて言ってきた。 「あら、私も食べていいの?」 不機嫌そうに言えばナルトはたじろぎながら「も、もちろんだってばよ」と口元をヒクヒクさせた。最初はコイツの分のピザを全部食ってやろうか! と思ったけどピザがきたらそんな気分もなくなった。 目の前で嬉しそうにパスタとピザを半分にして食べ合う二人。そんな光景を見てたらなんだかバカらしくなったからだ。たまに見つめ合って「美味しいね」と笑う。そんな二人を見てたらお腹もこの状況も充分すぎた。 カラになったお皿にフォークを置いて私は今の自分にピッタリの挨拶をした。 「ごちそうさま」 |