ショートノベル | ナノ


将来のこと


「枢はさ、将来のこととか考えた事ある?」

「?」


枢の部屋から、外を眺めながら俺は枢に聞いてみた。
多分、枢には理解できていないんだろうな。
俺の質問の意味。
・・・別に理解されたいなんて思っちゃいないけど。


「俺はね、たくさん考えるよ」

「・・・そう」


たくさん・・・たくさん・・・。
色々な事を考える。
でも、枢もたくさんのことを考えるんだろうね。一人で。
全部背負って。


「枢は・・・」

「・・・何?」

「・・・いや、なんでもない」


夜の月光は、俺たち吸血鬼には優しいけれど、朝の光は俺たち吸血鬼には優しくない。
ああ、このまま朝なんて来なければいいのに。なんて。


「今日は不思議だね、進」

「進さんはいつでもミステリアスだぜ?」


そう言って笑ってやれば、枢もわずかにだけど笑う。

将来の事

おれはね、きみとの将来(みらい)を考えるんだ

でも

きみはちがうんだよね


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