ずっと・・・ 黒神めだかが帰ってきた。 すごくボロボロだったけど。 でも。でも。でも。でも。 そんなの。そんなのどうでもよかった。 「球磨川先輩」 「『あれ、進ちゃんだ』『どうしたの? 進ちゃん』『あ、もしかして「卒業おめでとう」ってお祝いに来てくれたの?』『それともそれとも、大学全部落ちた僕を笑いにきたとか』『就職も別に決まってない明日からまじどうしような僕を笑いに来たとか?』」 「いや、違うし。つか、まじでアンタ大学落ちたんだ。・・・まあ、過負荷だもんな。しゃーないだろ」 鼻で笑ってやれば、目の前の過負荷は大袈裟なくらい落胆して、「『明日からどうしよう・・・』」なんてつぶやきだした。 けど、それもそれでこの過負荷の性質なんだから仕方ない。 と、いうか。それならどうやって高校入れたんだよ。・・・とか今更過ぎる事は聞く気が起きないけどさ。 「でも、祝いに来たってのは一部あるかも」 「『いいよいいよ』『僕なんかの為に祝うとかさ』『僕には明日を考えなきゃいけないからさ』」 「どんだけ心配してんだよ。大丈夫だろ。今まで何とかなってきてんだから、どうせ明日からだってなんとかなるよ。球磨川先輩ならへーきだろ」 だって、球磨川先輩だし。 とか言ってやれば、「『・・・やだ、進ちゃんが優しい』『僕明日から本当に大丈夫かな』」なんて言いやがるから、一応蹴っておいた。失礼なやつだ。 俺は溜め息を吐いて、目の前の過負荷に手を差し出した。 あ、別にお手をどうぞとかそーいうんじゃないから。 「『・・・なに?』『どうしたの、進ちゃん』『僕はお手なんて言ってないよ?』」 「言われてもやんねーよバァカ。ちげーよ。そんなんじゃなくて、ボタン」 「『ボタン?』」 「第2ボタン寄越せよ。因みに、もう無いとか言ったら監禁してやる。ヤダっつったら殺してやる」 「『え、なにその選択肢』『どっちみち僕が選ばなきゃいけない答えはイエスのみじゃないか』『しかも、それが物を貰う態度かよ』『別にいいけどさぁ』」 卒業証書の入った筒を脇に抱えて、過負荷が学ランから第2ボタンを引きちぎる。 それを過負荷が俺の目の前に突き出して来れば、俺はそれを受け取ってポケットに入れた。 「どうも、球磨川先輩。卒業おめでとーございます」 「『心のこもってない棒読みどうもありがとう、進ちゃん』」 「・・・・・・なあ、球磨川先輩」 「『なになに、進ちゃん』『今度は何が欲しいんだい?』『言っておくけど、僕はもう残念ながら卒業証書くらいしか持ってないよ?』『今日は月曜日じゃないからジャンプも持ってないしー』」 「いらないよ。何も」 何も、いらないから。 だから。 「卒業、するなよ・・・禊」 気付けば、俺は過負荷を抱きしめてた。 俺の腕の中にすっぽり収まってしまう過負荷(せんぱい)。 涙なんか流さない。けど、その代わりにきつく抱きしめる。 離さないとばかりに、きつく。ぎゅっと。 「『進ちゃん・・・』」 「禊がいない生活なんて、・・・イヤ、だよ・・・。ずっと俺の側に、いろよ。俺の隣にいろ、よ・・・」 離さない。 離したくない。 卒業なんて。 残りの俺の学園生活にこの人がいないなんて。俺のこれからの生活にこの人がいないなんて。俺のこれからの人生にこの人がいないなんて。 考えたくもない。 「・・・さっきの、やっぱりうそ。なにもいらなくなんてない。頂戴・・・禊を、俺に頂戴。禊の人生すべてを俺に・・・頂戴」 「『・・・・・・』『いいよ』『進ちゃんになら、あげるよ』」 「!! ホント!?」 「『うん。本当』『僕なんかで良ければ、あげるよ』『その代り、ちゃんと面倒見てくれよ?』『僕はすぐ噛みつくぜ?』」 「ずっと・・・ずっと一緒だ。もう、絶対に・・・・・・離さない!」 俺はまた、ぎゅうって禊を抱きしめた。 離さない離さない。 ずっと一緒だ。 「・・・愛してる、禊」 「『僕も、愛してるよ』『進』」 ずっと・・・ 今週号のジャンプ本気で泣きました。 愛してます、禊ちゃん。 [しおり/戻る] |