G対処法 授業も終わり、部活時間。所謂、放課後。 夢は鞄を持って教室を出る。 そして、歩いて部室の前まで来て、夢はピタリと足を止め、首を傾げた。 中から、普段は聞こえない物音と悲鳴が聞こえたらかだ。 「・・・?」 『ちょっと、真田! 皇帝なんだから、固まらないでアレやっつけてよ!』 『むっ、無理だ幸村っ!!』 『いけ、弦一郎』 『ぎゃははははっ、ふくぶちょーが怖がってる!!』 『ふっ・・・笑ってん、なら・・・っ、お前が行けよぃ、赤也ぁ』 『丸井も笑ってるなり』 『どうでもいいから、さっさと誰か行けよ・・・って、アレ? 柳生? どうした、固まって?』 『・・・・・・』 「・・・はぁ」 溜め息を吐いて、そっと静かに夢は部室に入った。 すると、部室の中には黒光りするそいつ。通称・Gことゴキブリに奮闘する、立海大テニス部レギュラーの姿があって。 夢は再び溜め息を吐くことになる。 「・・・なにしてるんですか、先輩たち」 「夢!? いつの間に!?」 「今さっき来ました。あと、もう一度聞きますね。なにしてるんですか、先輩たちは」 いや、見て分かる通りGに奮闘しているのだが。 それでも、夢は聞かずにはいられなかったのだ。 あまりにもカオスな現状に。 おろおろとする先輩たちに頭を抱えつつも、部長の幸村が涙目でGから一番離れ小さくなっている姿に、夢は名前の付け難い感情に揺さぶられた。 「・・・・・・チッ」 そして、小さく舌打ちをすると、夢は素早く動くのだった。 Gを見て固まる柳生とそれに首を傾げるジャッカルの腕を引いて退かせると、 お腹を抱えて笑っている赤也と丸井、それを見て溜め息を吐く仁王をも追い抜いて、夢はGに向かった。 柳に押されGに強制的に向かわさせられている真田をも押し退いて、夢はカサカサと動くGの前に仁王立ちをする。 「夢・・・?」 聞こえたのは、困惑する幸村の声。 他の声も聞こえたはずなのだかが、夢には幸村の声しか聞こえなくて。 夢は近くにあったホウキを手に取ると、一瞬も躊躇う事なく開いたドアの向こう目掛けてGをホウキで掃いた。 そして、ホウキを元通りに立てかけると開いたドアを閉める。 「これで、いいですか?」 無表情のまま聞いた夢。 しかし、彼らは夢の一連の行動に戸惑い固まってしまい反応ができない。 それに、更に溜め息を吐いて夢は声を張り上げる。 「さっさと部活しろ、テニス部員!!」 そんな夢の声に、ハッと意識を浮上させた一同は、バタバタと動き出す。 それを見て、夢は未だ固まる柳生の鳩尾に拳を入れた。 「仁王先輩もさっさと行きましょうね、柳生先輩はもう行きましたよ」 「プリッ・・・夢ちゃん、Gがっ。Gがぁっ」 「・・・うっぜ」 再び舌打ち。 女としてどうかと言う言葉は、今更だった。 また、柳生の格好をした仁王は柳生の姿のまま鳩尾を抑えながら夢に泣きついていて。 しかし、夢は仁王など相手にすらせず、ポカンとする幸村へ向かう。 「幸村先輩」 「・・・夢・・・すごいね、君は」 「そうですか? 普通ですよ」 仁王への対応とは打って変わり、笑顔で対応した夢は幸村の手を両手で握った。 そして、一言。 「あんな可愛い幸村先輩を見れればG如きどうってことないですよ!」 「・・・・・・そっか」 ニコッと爽やかに笑い言った夢。 幸村は間を置いて苦笑したが、内心は笑える事ではなくて。 しかし、Gに対して恐怖していたのも確かなので、幸村は、出かけた言葉を静かに飲み込んだ。 G対処法 [しおり/戻る] |