ホットココアよりも甘く、温かく もぞもぞと動いて、それは毛布と布団を被りその中で小さくまるくなる。 中からは"スゥー・・・スゥー・・・"という寝息と共に、「んぅ・・・」と小さな呻り声も聞こえてきて、暁はわざとらしく溜め息を吐いた。 そして、それに近づいて、丸くなってるところを軽く"トン、トン"と叩いてやれば、少しもぞもぞとそれは動く。けれど、出て来やしない。 「おい、起きろ夢。なんでお前は英のベッドで寝てるんだ」 「英は?」と聞いてみる暁だが、勿論返事はない。 そう。そもそも、今それが寝息を立てているベッドは。夢が寝息を立てているベッドは暁と同室の英のもので、布団だって英のものだった。 しかし今、ここに英はいない。寝ているのは夢。 暁は再び溜め息を吐いた。そして、丸くなっているそこから手を離し、最終手段に出る。 「ホットココア作ってきたんだがな。夢がいらないというなら、俺が・・・」 「私のココア!!」 バサッと勢いよく布団から出てきて、しっかりと覚醒状態で夢は暁の腹部に抱き着いた。 思わずよろけそうになるが、手に持っているココアがあるので、なんとか踏ん張りココアを零すまいとした。 こんなところで零せば、英の布団にココアは全染み込み、後々英に色々言われるのがイヤだったから。 布団から出てきて、「ヤダヤダ、ココア飲むーっ!」と暁の腹部に抱き着いて駄々を捏ねる様は、まるで小さな子供。 実質、人間である夢は暁からしたら子供も同然のようなものなのだが。 夢の頭を撫でながら、「ココアはやるから、離れろ」と言えば、面白いほどに素早く離れてココアを待つ夢。 まるで餌を待つ犬の様だな、と思いつつも暁は苦笑してココアを夢に差し出した。 「ココアーっ!」 「で、英は?」 「んー、知らなーい。私が来たときには、もういなかったよー?」 「・・・寮長の所か」 「はぁ・・・」と本日何度目かわからない溜め息を吐けば、暁は頭を押さえた。 ―――また、とばっちりが飛んでくるな。これは。 「管理不足」と言われ、自分にも"お仕置き"が来ることを考えると、やはり溜め息しか出てこないのだ。 けれど、暁の目の前で"ふーっ・・・ふーっ・・・"と冷ます仕草をしながら、チロチロとココアを飲む夢を見ていれば、そんな憂鬱な気持ちもどこへやら。 自然と、暁の表情は和らいでいく。 「夢」 「にゃにー、暁」 「どうせなら、俺の布団に潜れば良かったのに。どうして英の布団に?」 「んー? 英いなかったしー、暁ねてたから起こしちゃ駄目かなって思って」 「・・・そうか」 夢なりの、小さな心配り。 それを知って、更に暁の心は穏やかになっていくが、それと同時に黒い感情も顔を覗かせ始めてしまうのは、暁も「仕方ない」と思っていた。 ココアを飲む夢の頭に手を置き、暁は夢に言う。 「今度は俺のベッドに、な」と。言う暁に、夢は首を傾げながらも「暁えっちぃよ」と茶化し笑った。それに「バーカ、そういう意味じゃない」と弁解する暁。 勿論、そういう意味じゃないことは夢にも理解できていた。だからこそ、こうして茶化して遊ぶのだ。 「ココア、美味しい」 「そうか」 「ん・・・ね、暁。私もう少し寝たい」 「ああ・・・。俺が戻ってくるまで、俺のベッドで寝てればいい」 「うん。そうする。・・・大好き、暁」 「俺もだ、夢。愛してる」 「・・・ばか暁。えっち」 「なんでそうなる」 ホットココアよりも甘く、温かく 英君はこの後、枢様にお仕置きされた後、管理人が美味しく頂きました。 ごちそうさまでした。 暁先輩の色気はえっちぃと思います。ごめんなさい。 [しおり/戻る] |