ショートノベル | ナノ


手のかかる子


もそもそと動いて私に抱きついてくる銀色。
ちょっと、邪魔。
でも、退かさない。


「寒いなり、夢ちゃん」

「そうだね、寒いね〜」

「夢ちゃんは温かいのう」

「よく言われる〜」

「夢ちゃん、夢ちゃん」

「なぁに、仁王くん」

「さむい」

「うん。そうだね」


軽く頭をたたきつつ、小声で「苦しいよ」って囁けば、若干和らぐ抱きしめ。
本当に、この子は可愛い。
これだから、甘やかしちゃうんだよ。
そんなことを考えながら、私は笑顔で仁王くんのおでこを突いた。


「ほらほら、仁王くん。みかん食べない? 皮向いたよ」

「ん・・・夢ちゃんが食わせてくれるんなら食う」

「うん。いいよ。だから顔を上げて。それじゃ食べれないでしょう」

「プリッ・・・」


みかんを一粒差し出せば、顔をあげてパクっと私の指ごと口にいれる仁王くん。
そしたら、私の指から口をはなして、仁王くんはもぐもぐとみかんと噛む。
ああ、もう。
本当に。


手のかかる子
可愛いね、仁王くんは。

  ピヨ・・・。夢ちゃんのが可愛いなり。

ふふ・・・。

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