さみしんぼな、かわいい きみ 春の匂いを乗せた風が吹いて、誰かがくしゃみをした。 人の声で賑やかな校門付近。 そこで見つけた銀髪に、私は声をかけた。 「仁王先輩」 「夢・・・」 「ご卒業おめでとうございます」 「・・・ああ」 ―――あれ、おかしいな。 私は首を傾げた。 それは、色々と思うことはあると思う。3年間通った中学校を卒業したのだから。 けれど、この"卒業式"という日に、卒業式を今さっき終えたばかりで、あの彼がここまで元気が無いなんて。 どうしたのか考えてみても仁王先輩じゃない私には考えもつかなくて。 「どうしたんですか? 仁王先輩」 「プリッ・・・」 「仁王先輩」 「・・・・・・」 今となってはお馴染みの仁王語を発した仁王先輩に少し強めのトーンで言えば、仁王先輩は沈黙。 私も黙ってみれば、やっと仁王先輩が口を開いてくれる。 「卒業・・・しとうない」 「・・・はい? 今、なんと?」 「じゃから、卒業しとうない言うたんじゃ」 「・・・W h a t ?」 仁王先輩の言葉に、心の底からの深いため息が出る。 この先輩は、何を言うかと思えば。 さすが、コート上の詐欺(ペテン)師よろしくコート上の宇宙人と呼ばれるだけはある。 地球人の私には理解できません。 「さみしいんですか?」 「ピヨッ」 「高校に上がるだけですよ? みんないるじゃないですか」 「プピーナ」 「とりあえず、人語話しません? 言葉のキャッチボール」 「ピリーン」 「・・・・・・」 だめです。私では交信は無理です。 誰か通訳を。 そんなことを考えていれば、不意に私を抱きしめた先輩。 驚いたけど、そこでふと思いつく。 でも、まさか・・・。なんて思いつつも、私はそれを仁王先輩に聞いてみた。 「あは、もしかして私と離れたくない・・・とか」 「・・・・・・」 見上げた先輩の耳が真っ赤で、更には無言で力強く抱きしめてくる仁王先輩に、内心マジかよ・・・と思った。 そしたら、なぜか急に先輩が可愛く見えてきて、ついつい笑みが。 くすくす、と笑いながら仁王先輩の背中に腕を回して背中を軽く叩いてあげる。 「大丈夫ですよ、せんぱい。私はいつでも先輩と一緒にいますから。それに、私だってすぐに高校に上がりますから。・・・ね?」 「・・・・・・」 「大好きです、仁王先輩」 「・・・俺も。愛しとう、夢」 私の存在を確かめるように、ぎゅうっと力強く私を抱きしめる仁王先輩。 そんな先輩が、可愛くて。子供っぽく見えた私は正常だと思いたい。 さみしんぼな、かわいい きみ におーかわいい におーかわいい におーかわいry [しおり/戻る] |