ショートノベル | ナノ


桜の木の下で


青く澄みわたる空の下、私は桜の木を見上げる。


「跡部先輩」

「なんだ、夢」

「桜の花が咲きましたね」

「・・・そうだな」


跡部先輩も、桜の木を見上げる。
ぽつぽつと咲き始めた桜の花。
今年は早く満開になりそう。
少し目を閉じて、目を開けば私は隣の跡部先輩を見た。
跡部先輩はすぐに私の視線に気づいて私を見てくれる。
それが少し、嬉しかった。


「跡部先輩。ご卒業おめでとうございます」

「ああ・・・。ありがとう」


一瞬驚いてから、お礼を言う跡部先輩。
そんな跡部先輩が可笑しくて、私はつい笑ってしまう。


「ふふっ・・・」

「おい、なんで笑う」

「だって・・・ふふっ・・・」


跡部先輩が眉間に皺を寄せる。
駄目だ、堪えられない。
込み上げてくる笑いも、涙も。
笑い出したのが合図になったみたいに、決壊したダムのように溢れ出す涙。
止められない。


「な、夢? どうし、」

「ご、ごめんなさい。これはっ・・・すみません」


涙が溢れ出すのに。笑いが止まらないのに。
戸惑う跡部先輩が可笑しくて笑いが込み上げてきて、でも、寂しさやらなにやらで涙が溢れ出る。
でも、結局は。


「大好き、です。跡部先輩。卒業、してもっ・・・大好きです」

「夢・・・。はっ、それは俺様のセリフだ! 俺様が卒業しても夢はずっと俺様のだ。それは変わらねぇ」


愛してる、夢。
そうやって私の耳元で囁いて、跡部先輩が私のおでこにキスをする。
それがむず痒くて、跡部先輩を押し退けると、跡部先輩はわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
あ、髪の毛がボサボサになっちゃう。・・・でも、いっか。なんて思える程跡部先輩の掌は気持ち良くて。

桜の木の下で


リア充め。
末永く爆発しろ

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