ショートノベル | ナノ


真似っ子春一番


ゴウッ・・・と吹く、南からの春一番。
ひらりとスカートが舞い、夢は咄嗟にスカートを手で抑える。


「っ、と・・・。危ない危ない」


風に煽られる髪とスカート。
しかし、夢はそんな強風に負けることなく、仁王立ちして風と向き合った。
砂埃が目に入って痛い。


「幾ら春一番といえど・・・・・・。私に勝てるのは私だけよ!!」


胸を張り、独りでにそう言った時だった。
背中に打撃が加わり、「うぎゃっ」と地面に膝着く夢。
明らかに蹴られたであろう痛みに、夢は涙目になりながら後ろを振り向く。
そして、自分の想定していた人物をこれでもかと睨み付けた。
夢相手にこんな事をするのは、たった一人しかいなかったからだ。


「何すんのよ、大輝!! 女の子を蹴るってどういうこと!?」

「うっせーよ」


やはり、夢を蹴ったのは青峰大輝その人物だった。
素早く立ち上がり、ポカポカと青峰を殴る夢。
しかし、青峰はそんな小さな夢の攻撃は諸共せず。
ただ、一言。


「真似すんなボケ」

「バカに言われたくないもん」

「はぁ!? 誰がバカだ!! お前よりはバカじゃない!!」

「私よりはってことは、自分がバカなの認めるんだー? やーい、大輝のバーカ、ブワァーカ!!!」

「むかつく!!!!」


なんとも幼稚な言い争いを繰り広げる二人を見て、小学生たちがこそこそと「大人気ねー」と言い合っている事を、二人は知っているのだろうか・・・?


真似っこ春一番
(バーカ、バーカ大輝のばーかぁああああ)
(うるっせぇ!! バカっつー方がバカなんだよ、夢のばーかぁああああ)


後書き
風・・・強いですね。
つらぁ・・・です。

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