ショートノベル | ナノ


リア充


寒い。
寒くて冷たくて。
心まで冷たくて。


「アンディさーん・・・殺していい?」

「・・・はぁ?」


突拍子もないことを言い出した夢に、アンディは首を傾げため息を吐いた。
そして、アンディは夢の頭を撫でる。


「どうしたんだよ、夢」

「だってさ、目の前に・・・」


ぐぎぎぎぎっと歯軋り。
どこか夢の瞳は殺気だってて。


「リ ア 充 死 ね 。 滅 べ !」


どこからこんな声が出るのかと思うほど、低くドスのきいた地べたを這いずるような声。
夢は、据わった目でアンディと夢の目の前でイチャイチャと手をつなぎながら歩くカップルを見ながら言った。
小さく、変わらぬ声で「爆発しろ」を連呼する夢。
アンディは思わず固まる。


「夢・・・?」


ぶつぶつとアンディの話は聞かずに呟き続ける夢に、アンディは固まるが、少し考えて夢の手を掴む。
当然、夢は驚いてアンディを見た。
さっきとは違う表情で。


「あ、アンディ?」

「これで俺らもいっしょだな!」


今の夢には眩しいほどの笑顔で言ったアンディに、夢は思わず唖然とする。
しかし、すぐにその顔は朱に染まり、りんごの様に真っ赤になった。


「ば、バカじゃないの!? アンディのスケベ! ばーか!!」

「へっ!? な、なんでだよ。おい、夢!」


赤面した夢は、そのまま凄まじいスピードで目の前のリア充の間を裂き消えて行った。
その場に残されたアンディ。
やはり、リア充は滅ぶべきなのである。
いつの間にか温かくなってしまった顔に、夢は気づいてない。

リア充
(ばーか、ばーか! リア充もアンディもばーか、滅べ!)
(意味わかんねー!)

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