ショートノベル | ナノ


チョコだけに


「少佐っ」

「どうした? 夢」

「ハイっ、チョコレート!」


兵部に差し出された、可愛らしくラッピングされた箱。
夢曰く、中身はチョコが入っているらしい。
笑顔で差し出す夢に、怪しむことなく兵部はそれを受け取った。


「ありがとう、夢。後で食べるよ」

「うんっ! ちゃんと、少佐の体のことを考えて、甘さ控えめに作ったんだ」

「本当かい? 前回はひどく甘かったからな。でも、僕を年寄り扱いするなよ」

「え、だって年寄りじゃん」

「ん?」

「あ、ううん。なんでもない。少佐はまだ若いよね」


―――精神年齢は。
口には出さず、心の中でつぶやいた。
表面上は笑う夢。


「じゃ、私はもう行くね」

「ああ」

「ちゃんと食べてよねー、しょーさっ!」

「わかってるよ」


やれやれ・・・とため息を吐いた兵部を見て、夢は瞬間移動能力(テレポート)を使った。
その時、兵部に背を向けて夢がニヤけていたなんて、兵部は知らない。
夢が渡したチョコが、甘さ控えめどころか激辛のチョコレートということも、きっと兵部は知らない。


チョコだけに
チョコっと悪戯を
「夢、さっき少佐が怒りながらお前を探してたぞ。・・・何をしたんだ」
「少しイタズラー。・・・でも、あっちのほうが心臓に悪かったかなぁ」
「お前・・・」
「ふふっ・・・」

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